自分専用Wikiのススメ


 今やすっかり調べ物の必需品になったウィキペディア
 しかし、特に難しい用語については、ウィキの文章を読んでもさっぱり分からない事も多々あります。
 また、いろいろとウィキペディアの情報を読みつつ、しかししばらく間を開けて思い返してみると、自分の頭には残っていなかったり。


 やはり、自分の身の丈にあった、自分で一つ一つ納得した知識でないと、なかなか身にならなかったりするものです。
 で、思ったのでした。「自分専用のウィキを作ってみれば良いのでは?」


 自分で読んだり調べたりして、自分が面白いと感じた事だけを集めていくウィキを作ったら面白いのではないかという事ですね。
 普通の読書家の方はもちろん、特にウンチク系(?)の小説やエッセイを書く方にはかなり有用なのではないかと思うわけで、まぁ既に実行されている方もいらっしゃるでしょうが、試しにエントリーを立てて紹介してみようかと思った次第です。


 現在、私がちょくちょく付け足している自分用ウィキが、こんな感じです。


http://www12.atwiki.jp/zsphere/


 まだかなり半端なものですが、毎日少しずつ、付け足していくうちに面白いものにならないかなと、期待しているところです。
 いくつか項目を見ていただくと分かるかと思うのですが、たとえば人物について、その生没年や出身地などは省いているケースも多いです。
 ウィキペディアに載っているような情報は、いつでも見られるわけで、この場合は重要ではないという判断からこうしています。むしろ、グーグル検索をしてもパッと出てきたりはしない情報こそが、こうして拾い集める価値があるという。
 また、既に自分にとって先刻承知の事象も省いています。後述しますが、これを打ちこんで作るのもそれなりに時間がかかるので、本来自分用のものであるならば、省けるところは省くわけです。


 普段、本を読んでいて「面白い」と思った事も、案外簡単に忘れてしまうもの。かといってノートなどに書き記しておいても、管理が大変です。せっかくウェブ上で便利に編集できるものがあるのですから、という事で利用し始めたのでした。
 また、利点もいくつかあります。


    ・検索ができる
 ページ内の検索が可能なのが、最大の利点の一つだと思います。ある程度データベースが充実してくれば、たとえば人物名などで検索をかけてみると、思わぬつながりや、発見があるかも知れません。もちろん、欲しい情報にアクセスしやすくなるので便利ですし。


    ・データ消失の危険性が低い
 データベース管理ソフトのようなものもありますし、やろうと思えばメモ帳などに直接書いてフォルダに入れておく事もできますが、そういった自宅PC、ローカルフォルダに入れていく場合、怖いのはやはりデータの消失です。パソコンのクラッシュなどでデータが飛んでしまった場合、かなり手痛い思いをする事になります。
 バックアップをとっておけば良いわけですが、日々少しずつ付け足すようなものだと、バックアップへの対応も面倒だったりする場合もありますし(バックアップソフトなどを使用していればまた別なのかも知れませんが)


     ・ジャンルにとらわれる必要がない
 自分専用のデータベースですから、自分が面白いと思った事だけ、好きなように編集していけばよいわけです。歴史も、工学も、文学も美術も、その他気になったフレーズやアイデアメモなども、なんなら料理のレシピとかでも、まとめて記しておけば良いわけで。
 雑多な情報を整理して記していくにあたって、最初のうちは試行錯誤が必要で面倒かも知れませんが、工夫次第で、ジャンルに縛られて考えていた時では思いつかなかったような事が見えてくるかもしれないと。
 少なくとも私は、そんな期待もあってこのウィキ作りを続けていたりします。



    ・情報同士をリンクでつなげられる
 各ページ同士はリンクでつながっていますので、たとえば「歴代江戸幕府将軍」の項目と、「徳川家系図」の両方から、「徳川家康」の項目へリンクを張ってどちらからでも参照できるようにする、といった事が可能です。
 紙で管理していれば、同じ内容のものを二つ用意しなければならないところ、項目へのリンクを編集するだけで、同じ内容を複数のジャンルに同時に掲載したりできるわけです。
 もちろん、外部リンクも可能ですし。



 もちろん、逆に欠点もいろいろあります。


    ・使いものになるまでに時間がかかる
 入力作業には、けっこう時間がかかります。そして、100や200ほど項目を入れても、まださほどの役には立ちません。検索機能なども使って、情報同士をつなぎ合わせるという形で本領を発揮させられるのは、相当先という事になるでしょう。
 自分にとって面白い内容だけでデータベースを作るのが目的ですから、外部からの切り貼りで水増しするのも本末転倒です。従って、地道な作業を積み重ねないと、なかなか成果はあがらない。
 それでも備忘録として機能するだけでも悪くはないのですが。


    ・「論理」を保存するのには向かない
 こうした形でデータベースに入れられるのは、「○○と××は親子だ」とか、「○○は××だった」とかいう、単純な事実関係が主です。
 たとえば「三平方の定理の証明」だとか、「プラトンにとっての理性とは」といったような、精密な論理を丸ごと保存したり、論理や解釈を比較したりするのには向きません。
 従って、一冊の本を読んでそこから断片的な知識や事実関係を切り取って拾い上げる事はできても、その本全体としての論旨、著者の主張などを掬いあげるのには向きませんし、それはこのウィキとは別の形で受け取っていくしかありません。


    ・歴史・古典分野では、一部、文字が出ない可能性がある
 PC上で行う事ですので、古文や、あるいは中国古典籍などにある文字の一部はウェブ上では表示できないケースが考えられます。
 細かい事ですが、意外にイライラする部分です(笑)。
森鴎外」の「鴎」が我慢ならない人には向かないかも知れません。この辺は、手書きの方が勝っている部分ですね。




 ……さて、いろいろ書きましたが、個人的にはこういう利用法というのは、もっと広がっていっても良いのかなと思います。既にそういう使用法をしている方もいらっしゃるかも知れませんが、知らない方も多いでしょうし。
 そして、そういった「自分が面白いと思った事を集めたウィキ」同士をつないだりできれば、それも面白いのかなと思うのです。
 ミックスするという意味ではなく。つまり、そのウィキは、色々な知識を「その人が面白いと思った文脈で見る事ができる」ページなわけで、これは単独でも面白い読み物にもなり得るようにも思います。
 こういった形でウィキを作る事を、さらにつないでSNSの形にしたら、また面白い交流が起こるのではないかと、そんな事もぼんやりと考えたりしている昨今です。



 私個人は、この自分用ウィキを、一種の宝物集めのように考えて楽しんでやっています。
 私は伝奇方向に関心があるので、主にそういった内容が中心ですが、そういった本を読みながら見つけた面白い知識を、コレクションのような気持ちで集めて、項目を増やしていく気分でいたりします。
 それは本格的な学問から見れば、単なる雑学集めかも知れませんが、カジュアルに知を楽しむ方法の一つとしては、アリなんじゃないかなと、思ったり。
 また、ウィキペディアのような形で画一化されていく「知識」を、それぞれの手に取り戻していく方法の一つでもあり得るのかなと、ぼんやり思ったりしています。
 誰もが、同じウィキペディアを参照しなきゃいけないわけではないんだよと。自分だけの「ウィキ」を持っても良いんだよという形で、インターネット時代の知との付き合い方を自分なりに作れれば良いなぁと、そんな夢想も込めて、日々少しずつ項目を増やしているのでした。


 そんなわけで。同士募集中なのでした(笑)。