ロボットに倫理を教える

 

ロボットに倫理を教える―モラル・マシーン―

ロボットに倫理を教える―モラル・マシーン―

 

 

 気になったので気まぐれに買ってみた一冊。

 たまに人工知能とかそっち関係の本が読みたくなるわけですが、まぁそうした話の一貫として。

 

 いろいろと興味深い内容でした。ロボット工学とかそっち方面の本である以上に、これ倫理学の本として面白かったという感じです。

 倫理の体系にもいろいろあるわけですが、本書のように「ロボット、あるいは人工知能に実装する」という具体的なテーマがある場合、実装すべき倫理の方も画餅であったり、抽象的な理想論であったりしてはいられないわけです。具体的にプログラミングできる内実とサイズに落とし込まないといけない。そういった観点から検討することで、むしろ倫理学の方が逆照射される仕組みになっているわけでした。

 

 また、固定された倫理条項をあらかじめプログラミングしてそれを守らせるだけでは不十分で、ロボット自身が自らの参加している場を観察し、常に流動する倫理のラインを察してそこに合わせていく必要もある、という議論になり、なかなか難しいハードルが課されることになっていきます。この辺も意外性があって、けっこう面白く読みました。カント的な定言命法だけでは不十分という話になるわけです。

 

 既に我々の生活のあちこちに人工知能は進出してきていますし(株式の取引なんかにも影響を与えていたり)、社会と関わる以上、人工知能に何かしらの配慮を実装する必要というのはどうしても出てくるわけで、問題意識も喫緊のもの。私の個人的な創作に活かせそうなインスピレーションもありましたし、なかなか面白い有意義な読書でありました。