ブラウン神父の童心

 

ブラウン神父の童心 (創元推理文庫)

ブラウン神父の童心 (創元推理文庫)

 

 

 ホームズを一通り読み終えたので、続けてこちらを手に取った次第。

 学生時代に一度読んだ、はず、なのだけれど1ミリも記憶に残ってなかった。なんかもうもしかしたら勘違いだったかも知れないくらい。どんな本の読み方してたんだ、学生時代の俺……。

 

 一部ホームズと発表時期がかぶってるくらいの同時代作品らしいですが、読み味はびっくりするくらい違っていて、なかなか新鮮でした。ホームズものは即物的というか、殺人の理由とかも身も蓋も無い組織犯罪とか詐欺とかだったりしたのに対して、ブラウン神父のシリーズは内省的というか。探偵役が神父なのも理由でしょうが、人物の内面へのまなざしが深くて、ちょっと怖い。

 なんというかな、ホームズは推理や事件経過の説明についてもったいぶる事はあっても、ホームズ本人が何を考えてるのかとか行動原理とかは大変分かりやすいわけですが、ブラウン神父は何考えてるか分からないので、そういう意味でもちょっと怖い。私がもし犯人で、どちらかの探偵と対決しなくちゃならないとしたら、ブラウン神父の方が嫌ですね……(笑)。

 

 謎解き的に「うわ、やられた」となったのは2本目の「秘密の庭」で、この話で久しぶりに「あぁそうだった、ミステリってこういう世界だった、誰も信用できない!」ってなりました(笑)。

 それぞれの話のロケーション、道具立てなんかが実に上手くて。ミステリ的には古い作品なので、ある程度このジャンルの作品を多く読んでる人なら「あぁ、あの系統のトリックか」と察せられてしまうものもあるわけですが、トリックと事件のロケーション、道具立て、見せ方が上手いからそういう話でも楽しめてしまう。この辺は作者の腕だよなというか、ジャンル初期だからこその良さなのかなと。

 あと、「木の葉を隠すなら森に隠せ」という有名なフレーズもこのシリーズが出典なんですね。それも知らなかったのでびっくりした。うーむ、なんだかんだで発見の多い読書でした。