『知の教科書 密教』
- 作者: 正木晃
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/09/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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これは非常に有意義でした。
やっぱり密教の教義とか、この手の分野は入門書がないとどうにも手も足も出ないというのが実情です。
そういう意味で今回、非常に質の良い入門書と出会えたのは嬉しいかぎり。
密教の歴史からインド、チベット、中国密教、基本的な密教の用語と儀礼、曼荼羅の仕組みと意味、そして空海の思想についても。
およそ一通りの概要を知ることができたと思います。
まあ消化には時間がかかるかもですが、「最悪ここに戻ってくればいい」っていう足場があるというのは良いもので。
とりあえず思ったのは……以前『魔術』読んだ時も思ったのだけれど、本当にイメージだけで密教の儀式って進んでいくんだな、という驚き。
曼荼羅の仏様たちがやってくると観想し、それをもてなすと観想し、そして送り返すと観想する。
もちろん儀式の手順があって、護摩を焚いたり真言を唱えたりするのだけれど、最終的にすることはイメージ(って言っちゃっていいのかな?)によって大日如来と自分が同一であると実感し悟ること……。
正直、文章で読むだけだと、漠然とした印象はぬぐえません。だって客観的に見ればただ座ってるだけなわけで。到達目標とかも本人の中にしかない。検証不能。誇大妄想とかともどこで線引きするんだろうとか。
だからこそ宗教なんでしょうが……。
この感覚については、引き続き色々考えてみようとか思ったりします。
あと、空海についても少し人物像が見えてきて嬉しかった。
この人くらいになると、大人物すぎて周辺文献をちまちま漁ったくらいじゃ実像が全然見えてこなかったりするんですが。
この本で少し、ほんの少しだけ見えたような気がします。やはり、空海って人を理解しようと思ったら、「そもそも密教って何よ」って視点は必要になってくるし――密教の入門書であるこの本だからわかった部分もあったのかなと。
まあ、やっぱりそれでも一側面に過ぎないので……そのうち、本格的な空海の伝記とかにも手を出すかなぁ。
とりあえず、密教のアウトラインを知るという意味で非常に有意義でした。一歩前進。