夏期限定トロピカルパフェ事件


 なぜか、はてな不調でいつもの表紙写真が出ませんが。米澤穂信氏の最新刊。『春期限定いちごタルト事件』に続く〈小市民〉シリーズの二作目。


 ミステリ小説から離れてだいぶ経つ私ですが、この方の作品は相変わらず読んでいます。ちょっとした縁もあるし、それ以上に買って損は無いクオリティを毎回クリアされてもいるので。
 にしても、今回はやられた。見事。
 この「やられた」っていう感覚も、ミステリから遠ざかっていた分久しぶりで、しばらく読む手を止めて固まってしまいました。
 これまでの米澤氏の作品は、構成と伏線の上手さは感じさせつつも、どこか「小粒」だなという印象がどうしても私の中であったのですが(それは別に扱っている事件が瑣末だという意味だけでは必ずしもなくて、読んでいる私の心情の振れ幅が小さいという感じ)、『犬はどこだ』でその印象が少し変わり、本作で決定的に「凄い」と思わされた次第。
 とにかく、本作終章での謎解きは、こちらの想像の上のさらに上を行くもので。
 ネタバレを避けると何も言えませんが(笑)、とにかく「やられた」という感じ。


 同時に……事情を知らないまま適当を言いますが、米澤氏って現在のミステリ界でも、伏線の張り方という点では最上級クラスの実力の持ち主なんじゃないかと。世辞でもなんでもなく。
 とにかく周到で無駄がなく、最適化された構成。だからこそ、第一章「シャルロットだけはぼくのもの」のような一見小さな謎を扱っても、読み手を引き込めるし最後にあっと言わせることもできる。
 上手いなぁ。とにかく今作は、上手いなぁと思わされっぱなしなのでした。
 キャラ小説的に読んでも、小鳩くんや小山内さんはよくキャラを立てられているし、解説にあるようにその「キャラ小説的な人物描写」をこそ最後のサプライズに効果的に使っているのも見事。


 そんなわけで、これは素直に「続きが楽しみ」ですよ、と言っておく(笑)