名僧列伝

名僧列伝(一) (講談社学術文庫)

名僧列伝(一) (講談社学術文庫)


 基本的に、僧侶の伝記や評伝は当たりはずれが大きいような気がする。
 たとえば織田信長とかなら、(たとえば延暦寺焼き討ちとか)まだしも否定的な側面とかも視野に入れて評者も論評することが多いと思うのですが。
 高名なお坊さんの評伝とかの場合、書いた人が丸っきりその人に心酔しちゃってて、もう褒め称えるような事しか書かなかったりして、それが退屈でしょうがないという事が多々ある。
 この本も、正にそれ。
 正直言ってかなり鼻白みながら読んでいたのですが。


 特にこの本はダメですね。もう。
 沢庵禅師の清貧の生き方を賛美して、現代人の放蕩を嘆いたり戒めたり。中世の男たちの武骨な生き方が良いんだ〜とか、まあそんなような、横丁のオヤジが酒飲んで管巻いてるような事を、評伝の間に私見満載で垂れ流しで書かれていて、なんだかなぁと。
 大体、著者が恣意的に、自分の見解に引き寄せて引用文を選んでるのだろうに、その引用文と比較しても「いや、そんな安直なこと主張してる文じゃなくね?」というような解釈をしているらしく読めてしまい……いや、私の古文の読解力もそう褒められたものじゃないんで、アレなんですが。
 うーむ。


 そんな感じで、全然しっくりこなかった本ですが。
 それでも、取り上げられた坊さん五人――明恵道元、夢窓国師、一休、沢庵、
――の略歴を辿れただけでも、まあ無駄ではなかったかなと。
 そういうことにしておこうと思います。