東方求聞史紀

東方求聞史紀 ?Perfect Memento in Strict Sense.

東方求聞史紀 ?Perfect Memento in Strict Sense.


 そういえば書いてませんでしたね。感想。


 設定資料集という事ですが、まあ読んでいて愉快な本ではありました。
 後日ネット上で軽く感想を見て回っていたら、新紀元社の「Truth in Fantasy」シリーズに似てるっていうコメントがあって膝を打ってみたり。確かに、そう、あんな感じの本ですね(笑)。


 神話とかならともかく、個人の手による世界観をこういう形式の設定本にしてしまうと、いわゆる「厨くさい」感じはやはり多少出てしまいます。
 それは多分、原作者のZUN氏も理解しているのでしょう。だから、わざと作中の世界に住んでいる歴史書編纂者「稗田阿求」が書いた幻想郷縁起という形にすることで、ワンクッション置こうとしたのでしょうね。その辺の情報発信者、創作者としての直感と身の処し方が、相変わらず見事だなと思いました。
 で、その阿求さんの微妙に投げやりな筆致が楽しくてしょうがないのです。特に脚注。


 また、さりげに設定部分でも面白い発想があったりして楽しかったり。「式神」というのを、(生き物などにランさせる)プログラムに相当するものだと言ってみたり。
 小説家京極夏彦が大昔、作品内で「式神の式は数式の式です」と書いていましたが、その辺を意識しつつ発展させて作品に定着させる(それもシューティングゲームに)辺りが、やっぱ発想力の点ですごいよなぁと。
 プレイした方ならお分かりでしょうが、東方妖々夢のエキストラステージとファンタズムステージを相似な構造にすることで、この「式神」の設定をゲームとして定着させているわけです。言葉でくどくど述べなくとも、シューティングゲームのステージというゲームの文法でそれを表現できてる辺りが、さすがというところ。


 あとは、あれ、霊夢のコメントがことごとく役に立たねぇのが素敵(笑)。


 とにかくそんな感じで、気楽に読めて、ファンなら今まで以上に作中のキャラクターたちを好きになれる良質な設定本だと思います。良い仕事だ。


 そんな感じ。