歴史(上中下)


歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)

歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)

歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)

歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)

歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)

歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)


 畑違いのアリストテレスゾーンを抜け、そちらよりははるかに馴染み深い歴史学ゾーンの古典という事でヘロドトスを読み始めたわけですが。なんで読み終えるまでにこんな時間かかったかというと、私好みの記述が多すぎて、ちょっと読むごとに満足してしまってなかなか進まなかったのでした(笑)。


 「歴史の父」の誉れも高いヘロドトスではありますが、いざ読んでみると、想像していたよりも説話集チックな内容で、けっこう意外ではありました。まぁ、個人的にむしろそういうのの方が好みなので、余計に楽しく読んだわけですけれども。
 むしろ巻末解説によれば、当初この著作が説話集であって歴史書ではない、的に軽んじられていたところ、18世紀以降、考古学などの学問業績が蓄積されるに従って、「意外にも」本書が史実を正確に記載しているところが多かったことが認識された、とのこと。ちょっとその経緯には興味があります。いずれ時間が空いたら、じっくり追ってみたい気もしますが……。ヨーロッパの考古学成果に関する書籍って、新刊書店で探してもあんまり目にしないんですよねぇ。国内のに比べると。



 なんというか、読んでいて非常に気持ちのいい本でした。それはおそらくひとえに、その語り口の大らかさによるのだろうと思えます。ツイッターで何度か呟きましたが、長旅に出ていた親戚のおじさんが、上機嫌で旅の土産話をしてくれているみたいな(笑)。まるで語りながら身振り手振りを加えている、そんな様子まで目に浮かぶような、そんな語り口なのですよ。実際、ヘロドトスおじさんはナイル川をさかのぼってエチオピア辺りまで出向いたりして、その知見をも本文中に盛り込んでいるとのことで。
 話の本筋をそっちのけで脇道に逸れまくったり、著者が本文中に顔出してコメントつけたり、どことなく司馬遼太郎チックなのも良いw


 そういうわけで、話が脱線しまくるのが苦手な人には向かないかもですが、むしろそういう自由闊達な余談を挟みつつの語りを楽しめる向きには、絶好の読物ではないかと思います。私は無論後者なので、実に楽しんだ次第でした。


 さてそんなわけで、またも古代ギリシャの多様な豊饒さに触れてため息の出る思いだったわけですが。
 この後は、本来ならトゥキディデスに行くところなのですけれども、岩波文庫版が現在、新刊書店では手に入らないようで。ちくま学芸文庫にはあるのですが、今は岩波文庫を重点的に攻略しようということで、次はまた別の書籍に取り掛かることにしました。
 その感想は、また今度。