メルヒェン


メルヒェン (新潮文庫)

メルヒェン (新潮文庫)


 やんごとない事情で、ちょっと寄り道してヘルマン・ヘッセ


 うーむ、アンニュイな作品集でありました。
 なんだろうなぁ、十年以上前、学生の頃に読んでたら絶賛してたんじゃないかな、という読み味(笑)。ほのかな幻想味と、童心礼讃、戦争嫌悪。うーん。
 もちろん、今でもそれらを良さとして受け取る感覚がまったくなくなったわけではないのですが……たとえば本書所収「アウグスツス」や「アヤメ」なんかも素朴に良い出来の短編と読む気分もあるんですけど……うーん、私も世間ずれしたってことなんですかね(笑)。
 たとえば「別な星の奇妙な便り」なんかが顕著なんですけど、納得しきれない気分の方が強かったのですよな。「戦争をする心性」を外のもの、理解できないもの、自分とは縁のないものとして描く限り、戦争という人類の行為にたいするアンチとして弱いだろうと今の自分は考えるので。この作品のテーマ的な強さに共感できなかった部分があったりするわけです。
 まぁでも、巻末の解説によればヘッセ自身がナチスドイツに追われる経験などもしているそうなので、あまり即断すべきでは無いのかもしれないですが……。私にはそうした経験がまるで無いわけですのでね。


 なんかこう、煮え切らない感想にはなっていますが、個々の表現から受けた刺激なんかはけっこう楽しんだ部分もありました。ここ最近あまり受けてなかった刺激を受けたような感じで。まぁ、たまの息抜きにはなったようにも思います。
 来年あたりには近代文学にも着手できるでしょうし、ヘッセの『車輪の下』あたりももしかしたら読む事もあるでしょう。その時にまたじっくり向き合おうかなと思ったことでした。
 とりあえず今回はこんな感じの感想で。