第一回 モビルスーツ事始

  セリーヌ(以下、セ)
「みなさん、こんばんは。はじめましての方ははじめまして。セリーヌ・グラーナです」


  ルーク(以下、ル)
「えっと、助手のルークです」


セ「このたび、気まぐれ企画としてこんな事を始めてみることにしました。
  宇宙世紀のMSについて、その大まかな流れを軽く語ってみようという計画です」


ル「分かりやすさ重視! らしいです」


セ「現在、宇宙世紀という時代に活躍したとされるMSは、膨大な数に上ります。
  ガンダムが好き、という方も、なかなかそれらすべてを把握するのは大変なもの。
  このMSTにもたくさんのMSが存在しますが、たくさんありすぎて
  埋もれてしまっている機体も少なくありません。
  ……そこで、MS開発の簡単な流れをかいつまんで述べつつ、
  今まで注目を浴びなかった機体を掘り出すような企画ができたらな、という意味で
  軽くMS開発史を語ってみる事にしました」


ル「軽く、って言いながら、たいてい気づいたらすごい量になってたりするんですが」


セ「……コホン。
  まぁ、このKnuckle Headに参加されている皆さんは、MSTプレイヤーの中でも
  比較的こだわりを持った方たちが多いようにお見受けするので、
  既に知っている、当たり前の話ばかりになってしまうかも知れませんが、
  そういう方にも軽い読み物としてご笑覧いただけましたら幸いです」


ル「まぁ、軽い気持ちでひとつ」


セ「そういうわけで、第一回です。もちろん、この話からしなければなりません。
  つまり――モビルスーツとは、何か?」

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セ「まずは基本事項を押さえておきましょう。モビルスーツは、
  “Mobile Space Utility Instrument Tactical”、すなわち【戦術汎用宇宙機器】の略です。
  だいたい人間と同じ形の、手足を持った、15mから20mくらいまでの大きさの、機動兵器、
  といった風におよそ定義できます。
  まぁ、中には40mくらいの大きさのものもありますが」


ル「まぁ、その辺は分かります」


セ「そうですね、MSTを楽しんでいる程の方なら、MSといえば大体意味は通じるでしょうね。
  では、基本的な質問です。MSはなぜ、人の形をしているんでしょう?」


ル「……へ?」


セ「人の形をしていて、何か得なことがあるんでしょうか?
  たとえば、地上でMSのような人型のマシンを運用する場合、
  膝関節の部分などに多大な負担がかかり、ものすごく故障しやすくなる……、
  といったトラブルが起きやすいと考えられます。
  それに、高さ20mものマシンがのろのろと地上を歩いていたら、
  砲撃などの良い的になってしまいます。戦車の方が、ずっと効率的では?」


ル「う……」


セ「(にこにこ)」


ル「えっと、そう、もともとMSが、宇宙で使われる兵器だったわけで」


セ「その通りですね。もともと、重力のない宇宙空間で使用される事が前提の兵器、
  それがMSのはじまりだったと言えます。
  重力と空気抵抗のない宇宙でなら、人型の兵器も地上ほど運用が難しくはありません。
  そればかりではなく、手足を持っている事はプラスに作用しました。
  すなわち、AMBACです」


ル「あ、それ。なんか聞いたことあります」


セ「ええ、MSを語る上では欠かせない用語のひとつですね。
  AMBACは“Active Mass Balance Auto Control”の略で、
  能動的質量移動による自動姿勢制御と訳されます。」


ル「はぁ、全部意味あるんですねぇ……でもそれ、文法的に正しいんですか?
  なんか変なような……」


セ「それは言ってはいけません(キッパリ」


ル「……そーなのかー」


セ「そうなのです。さて、話を戻しますよ。
  そもそも宇宙空間には地面はもちろん、空気もありませんよね。周囲に何の取っ掛かりも
  ありませんから、方向転換をしようとする場合、自らスラスターを噴かす必要があります。
  移動や方向転換はすべて、推進剤を消費してスラスターやバーニアを使用しなければなりません。
  推進剤が切れてしまえば母艦に帰れず、慣性の法則に従ってどこまでも宇宙漂流です。
  したがって、推進剤の残量は作戦行動時間に直結します。
  そこでMSの利点ですが、手足を持った機体であれば、推進剤を使用せずにある程度の
  姿勢制御ができるということが発見されたのですね。
  宇宙空間で、腕を大きく振ったと想像してみてください。
  すると、体の方も反動で動き、向きを変えます。
  そういう形で、推進剤を消費せずに向きたい方向を向くのがAMBACの技術です」


ル「手足をぶんぶん振り回すわけですか」


セ「もちろん、それだけで済むわけではないので、機体各部のスラスターや
  バックパックのアポジモーターなどと併用するわけですが。
  いずれにせよ、この技術によって、たとえば連邦の航宙機セイバーフィッシュなどに比べて、
  宇宙空間をより自在に動くことができるようになった、わけです。
  一年戦争の開戦当初、ジオン公国軍コロニー落としによる短期決戦で
  勝負をつけようと考えていましたから、宇宙で威力を発揮するMSの運用に勝負を賭けた形ですね」


ル「けど実際には、それでは戦争は終わらず、地上に戦線は拡大して行った、と」


セ「そうですね。地球降下作戦以降、ジオンの苦悩が始まるわけですが……、
  今日はここまでにしましょう。
  次回、【MS−06 ザクII】をテーマに語りながら、その辺りにも触れられればと思います」


ル「はい、では今回はここまで、ということで」

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セ「およそこんな形で、毎回少しずつ進めて行こうと思います。
  つたない講師ですが、どうか皆様、よろしくお願いします」


   ☆試験に出る(?)今回の重要キーワード
・MobileSUIT
・AMBAC