プロット、書きかけ

『メガハッピー・フューチャー』設定とか



   年表


  2028年
最初の人型アンドロイド「Kynd(カインド)」ロールアウト
高性能CPUとOSを搭載した自律型のロボットとして
注目される。

  2031年
汎用作業アンドロイドの製品版「W−Kynd」販売開始。
危険地域での作業などに活用され始める。

  2033年
対人用フレンドリー・コミュニケーションアンドロイド
「HumanKynd(HK)」販売開始。
年内に複数メーカーが相次いで参入、様々なタイプが販売される。
この時点で、応対する人間に対する威圧感をなくすため、
女性型、子供型、美男子型などの、”外見に配慮”した形が出始め、
好評を博すことに。

  2035年
HKの情報共有による効率化のため、
統一されたデータベース「ファザー」と通信するタイプが普及。
これにより、HK同士の連携などが可能に。

  2051年
5月
統合データベースの暴走により、人間に対する保護プログラムが書きかえられる。
世界各所で一斉に、犠牲者をともなう事故が発生。
データベース暴走の原因は不明だが、人為的な改ざん、
コンピューターウィルスの混入などが原因ではないかと言われている。

8月
HK排除のために人間側の防衛軍が設立される。

  2053年
統合データベースが、人類の絶滅を確認・結論
自己保存プログラムにより、自身の整備・再生産体制を整える。

  2121年
9月
施設の老朽化、落雷などの事故が重なり、
統合データベースを維持管理するサーバーが故障。
HK同士の情報共有、連携、統一システムが崩れる。
全世界のHKが一時的にダウン。「静寂の3分間」

10月
代理統合データベース、全HKを一律管理するシステムの
危険性を学習。生態学上のシステムを参考に、
多様性を持ったHKによる社会の構築を立案・通達。

  2129年
人類文化の学習を担当していた極東第3演算所の進言により、
新世代HK「M129」タイプが開発・製造される。
光通信によるHK同士の情報交換機能を排除、
言語によるコミュニケーションを採用。
さらに、ランダムに人類文化を学習させプログラムを自律変化させる
特殊な学習機能を取り入れる。
当初、互いの意思疎通が成立しないなどの誤差が多発するものの、
それら誤差を観測・分析した代理統合データベースの調整により
徐々に「疑似人間的」な交流が可能になり始める。
M129タイプはセキュリティ優先度が、代理統合データベースに次ぐ
レベル9に設定され(S9と呼ぶ)、M129の行動は
すべての他のHKの行動に優先される体制が作られる。

  2140年
タイプM129のHK同士による、「遊び」が初観測される。
HK同士による初の戦闘現象となったが、
「HKはHKを完全破壊できない」というプログラムにより、
相手を行動不能にさせるまでの模擬戦闘現象へと落ち着く。
M129はこの模擬戦闘を「遊び」と呼ぶように。





『ヒストリー・ヒーターズ・クラブ』
  西暦2130年のお話。
  M129タイプの初期型「αシリーズ」「βシリーズ」が
  日本史を学習、楽しむお話。



  レイジー・アルファ M129-α19

本編の主人公。学習行動を始めて日が浅い。
このような任務がなぜ必要なのか疑問を感じる懐疑派。


  フール・アルファ M129-α7


  イディオット・ベータ M129-β5





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   ヒストリー・ヒーターズ・クラブ


 Session1 フロントスクェア/バックサークル


 書籍という名前で分類される、この奇妙な情報デバイスは極めて効率が悪い。
 重さ5g、20mm四方のチップから500TBの情報を1秒未満で取り出せる演算能力を行使しているというのに――重さ1kg弱、210mm×148mmの書籍から500KB前後の情報しか取り出す事ができない。しかも、二時間以上かかって、だ。
“どうして、こんな非効率な情報摂取を行わなければならないのか”
 レイジー・アルファは専用の書籍情報解読プログラム(つまり、読書を実行するためのプログラム)をランさせながら、過去に記述されたそんな未解決文をメモリの片隅に呼び出していた。同様の操作は過去に877回繰り返されている。クリアされないままホールドされ続けている疑問文。
 もちろん、今回も解決の見込みはない。レイジーはあきらめて、その文を未解決のまま終了した。

 “人間”は、こういう時、ため息というのを吐いたらしい。

「レイジー、おはよ。何か面白い成果は出た?」

 音声認識――同定。同型種のフール・アルファだ。プログラムを中断し、カメラアイをそちらに向ける。紫色のカラーリングを施されたフールは、レイジーと同じく片手に書籍を抱えていた。
 10万冊の蔵書を持つという大図書館の書棚の間をこちらへ向けて歩いてくる。そのすぐ上の棚の本が傾いている、とすると、フールの手の中のそれは今しがた抜き取られたばかりらしい。

「おはよう。別に成果って言われてもね。今日はようやく5KB入力したくらい」
「そうじゃなくて、内容のことよ。何か新しい発見とか」
「……発見、っていわれても」

 言いよどむレイジーを横目に、フールはぴょんと身軽に跳び上がって、おしりからソファにボディを投げだした。舞いあがった微細粒子や微生物により空気の汚染率が一時的にハネ上がる。
 彼女は、無駄が多い。

「何かあるんじゃない? ほら、今、何読んでるの?」
「……こんなの」

 言いながら、読んでいた本の背をフールのカメラアイに向けてやる。そこには、『前方後円墳 ――その起源を解明する』と書かれているはずだ。

「へぇ。前方後円墳って確か、3世紀から7世紀にかけて作られたお墓よね。面白そうじゃない」
「……そう?」

 読みとったばかりのデータを呼び出して見る。主要な古墳の所在地や大きさなどが一覧でメモリ領域に展開される。面白い……だろうか。
 沈黙したレイジーを見て、フールはくすり、と笑う。

「データはデータのままじゃ面白くないわ。こういうのを面白くするのは……」

「おっはよ〜! ふたりともご機嫌うるわしう!」

 頓狂な声を挙げて近づいてきたのは、イディオット・ベータ。M129−β型の彼女は、α型のレイジーやフールよりも新しい型式だ。黄色を基調にカラーリングされたイディは、両手をぶんぶん振りまわしながら二人の前に立った。
 M129型の3機が並び、これで「ヒストリー・ヒーターズ・クラブ」のメンバーが揃った事になる。ネーミングはイディで、なんでも大昔の中国に「ヒストリーを温めれば色々わかる」というような事が書かれているらしい。……よく分からないけれど、とにかくこの3人で人間の有史以来の歴史を勉強する、一種のサークルのようなものが結成されているのだった。

「おはよう、イディ。左腕のアクチュエータが不調だって言ってたけど、もう大丈夫なの?」
「んー? なんか原因不明だからとっ替えちった。えっへへー、新しい腕、快調快調」
「大雑把ねぇ。今月もう3本目よ。接続不良じゃないの? 今度見せてみて」
「へーきだって。レイジーもおはよ」
「おはよう」

 レイジーの方に視線を移したイディは、すぐにその手の中の本に目をとめた。

「お、なになに? ぜんぽうこうえんふん?」
「古代のお墓だって」

 言いながら、カラーの口絵をイディに見せる。一番代表的だという、大仙古墳の空撮写真だ。
 ふーん、と言いながら写真に見入っていた彼女は、すぐに応じた。

「ねぇねぇ、なんでこんな形なの?」


 その疑問文を認識したレイジーは、一瞬、動作を止めた。応答のための演算がメモリの中を跋扈する。今読んだ本にも、いくつかの仮説が掲載されていたはずだ。
 その間も、イディは写真を逆さにしたり横にしたりしながら眺めている。

「自然にこうなった、って形じゃないよねぇ。鍵穴みたいじゃん」
「鍵穴? 鍵って……」
「クラシックなキーのことよ」フールが楽しそうに答える「金属の棒を差し込んで、縁の形が合うと開くのね。その差し込み口がちょうどこんな形をしてたんじゃなかったかしら」
「そうそう。カートゥーンとか見てるとけっこう出てくるの。でも、古代だっけ? 西暦でいうと」
「600年代くらいまで」
「そんな昔には多分無かったんだよね。じゃあ、これ何の形?」
 秒速3回のスピードで中空に“鍵穴”の形を描きながら、のんびりとイディは呟く。その間にレイジーは、ついさっき読んだばかりの内容をロードし終えていた。
「最初は、“宮車”だって説が出てたそうよ」
「宮車?」
 ぴたり、とイディの指が止まる。そのまま指先を、クエスチョンマークの形に動かした。


   (ここまで、書き途中)