劇場版Z覚書、他
おととい、「星の鼓動は愛」を見に行って、やっぱり自分が一番気になってるのはシロッコとヤザンなんだな、と思っているのですが。
なんか、もやもやしているのですよ。
特にヤザンって、あんな嫌な奴だったっけ? っていう疑問がずっとあって。
もちろんお友達になりたいヤツじゃないんだけど(笑)、それでもTV版のヤザンは、こんなに分かりやすく嫌な奴じゃなかった気がした。TV版のヤザンも戦闘ジャンキーではあったけれど、「そっちに事情があるってことは、こっちにもあるってことだ」の一言で味方艦を沈めて平気でいられるような……そういう奴だったっけ?
……とはいえ、自分の中の違和感があんまり言葉にならなくて、「TV版のキャラたちはみんなイライラしてたから、ヤザンが目立たなかったのかな」くらいに思っていたのですが……。
先日、囚人022さんのブログの
http://zmock022.blog19.fc2.com/blog-entry-320.html
この記事で、以前結構のめりこんで読んだ「惑星開発委員会」というHPが新しくなって更新再開しているということを知りました。
で、そこの記事を色々と読んでいたのですが……中にTV版Zガンダムの全話レビューがあり。
「サイド2の危機」について書いた以下の部分を読んで、「あっ」と思ったのです。
この29話の隠れたポイントはジェリドとヤザンの対比である。ジェリドはプライドの高いお坊ちゃん系のエリートだが向上心が強く、努力家でもある。対するヤザンはどうみてもいい育ちではなく(ティターンズなのだから士官学校卒のエリートである可能性は高いが)自他共に認める「戦いが快楽」になってしまった「戦闘ジャンキー」である。
一見、まともで人間らしいのはジェリドなのだが、「この方が戦争が早く終わる」なんて建前を自分に言い聞かせ、虐殺作戦を実行するジェリドに対して、戦闘ジャンキー・ヤザンは「性に合わない」といって(あのティターンズで)堂々と命令を拒否する。もちろん、ジェリドだって「性に合って」いたわけではない。だけど、「マジメな優等生」で「向上心の強い努力家」人間だったからこそ、彼は毒ガスを撒いたのだ。……どこかで聞いた話じゃないだろうか? たぶん10年前くらいに似た話を僕らは耳にしたはずだ。あれは、一体どこの国だっただろうか(笑)。ユダヤ人虐殺の指揮をとったアイヒマンは凡庸な官吏だったと言われているが、そんな例を挙げるより、僕らにはかなり身近にいい例が転がっている。
ちなみに、この戦争を生き残るのはジェリドではなく、ヤザンの方だ。
劇場版Zでは、このエピソードが丸ごと削られているんですね。従って、「毒ガス作戦を拒否するヤザン」という部分もスポイルされてしまっている。
むしろ、毒ガス作戦に積極的に参加しそうなにおいさえ、劇場版ヤザンには漂っている気がするのです。シロッコへの手土産という打算的な理由によって、バスクを能動的に殺すという行為はTV版のヤザンにはなかったんじゃないか。
これは明らかに、ある種の「単純化」なんじゃないかと思うのですよ。TV版にあった皮肉が、周到に除去されている気はするんです。
この点も含め、上記リンク先のZガンダムレビューは、色々と目から鱗が落ちる素晴らしい記事なので、是非一読をオススメする次第。
その上で劇場版Zの意味を、もう一度考える必要があるなぁ……。
ちなみに、リスペクトの意味を込めて、トップページにもリンク。