邪魅の雫

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫 (講談社ノベルス)


 というわけで、三年半ぶりのシリーズ最新刊。
 なんだかんだで、私の人生を踏み誤らせた、私にとって非常に重要なシリーズなので、新刊が出たなら少々周囲に不義理をしてでも読むわけです(ぇ


 で。昨日読了しましたが。
 あ、一応以下、ネタバレ注意です。








 やっぱり、全体の構成というか、その辺はうまいんだろうと思うのですよ。今回は話の全編にわたって「邪悪」「やましさ」がテーマになってる様子ですが、それをこれだけ多い登場人物の胸中に、それぞれの形で潜ませるというような、その辺の統一感というかね、そういう部分は上手いんだよなこの人、と思うわけなのですけれど。


 今回の一番の残念さは、京極堂の書斎にて、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』を開きつつ「今回取り憑いてるのはこれだね」に始まる妖怪邪魅へのうんちくが、なかったことでしょうか。
 いや、何よりもまず京極堂のうんちくを楽しみに買うわけですよ私は(笑)。
 読者のうち数十パーセントはその辺は読み飛ばすのでしょうが、それでもアレが京極の妖怪シリーズを妖怪シリーズたらしめていたわけで。やっぱり寂しいですね。


 正直、序盤はかなり読んでいてかったるかったです。誰だかわからないキャラが、延々内面描写でゴネている。なんか、読者を物語の中へ引き込むためのフックがないような。
 そして今回、心情描写がうるさすぎました。たしかに緻密だし、ここまで詳しくキャラの行動を練っているのも凄いねとは思うけれど、いちいち開陳されるとそれはそれで。けっこうイライラします。


 で、事件の方も、そこまで大風呂敷というわけでもなく。真犯人、というか黒幕は、気がつけば女郎蜘蛛のようなことをしてしまいつつ、とうとう女郎蜘蛛になれなかったという感じ。
 話としての完成度が高いのはわかるのだけれど、やっぱり初期京極を読んだ時の目くるめくような読後感、っていうのはなくて。
 それはやっぱり残念だったかな。


 つーか、結局例の某大佐、名前しか出てこないのな。いつになったら再対決するんだおい(笑)。
 あと、木場の旦那も一シーンしか出てこないし。鳥口くんなんか、もうここ五、六年くらい名前見てないからそろそろ存在自体忘れるぞ?(笑)
 まぁ、そんな感じなのでした。もう一度でいいから、妖怪解説とばしまくりの京極堂が見たいよぅ。