斜陽


斜陽 (新潮文庫)

斜陽 (新潮文庫)


 読みやすくて深くて面白かった。やっぱ名作って名作といわれるだけのことありますな。


 人間なにがつらいって、悲劇にすらなれずにひたすらみっともない、って時ほど辛いことないと思うわけですよ。
 悲劇っていうのは一面では快感なわけですからね。だから、登場人物がひたすら悲劇な目にあう話とかが好んで読まれたり見られたりするわけです。義経とか。
 だから、同じ没落するんでも、悲劇になれればまだ本人にとってマシな部分があるのだけれども。そこにすら行き着けないっていうのは辛いよねぇと。
 で、この小説はもう、そういう空気をすごく上手く掬ってるなぁと思ったり。深刻なんだか深刻でないんだか分からない辺りが素敵です。


 でも、あれですね、主人公の29歳のご婦人ですら、口に出す言葉とか手紙の文面とかに「革命」なんて単語が出てくるのは、時代なのかなぁ。今そんな人いないよね、とか思いつつ読んでいました。それとも、これは著者太宰治が男性だから、そんな言葉を使わせてしまった(もしくは意識的に使わせた)んだろうか?
 どうにも、どうしても、私には「革命」という言葉が分からなくて。いや意味もわかるし、歴史的にどこでどういう革命があったか、それがどういう意味を持っていたかとかも多少はわかるけど。
 それでもやっぱり、「革命を起こす」っていうのが具体的にどんな事なのか、全然実感できないのです。
 それで上手く読み込めなかった小説や評論とかもいっぱいあるんだよなぁ。


 なんか、そんなことを思ったり。
 ともあれ、この作品は非常に読みやすく面白い。「とりあえずたまには文学読んでみようか」って人には是非、という感じです。