絶対音感


絶対音感 (新潮文庫)

絶対音感 (新潮文庫)


 前々から読みたいと思ってたんですが、たまたま書店のフェアのコーナーに文庫であったのを見つけて購入。


 まず何より、著者の丁寧な、そして膨大な人数への取材、その木目の細かさと目筋の良さが心地よいです。
 救急車のサイレンや、水滴が落ちる音が全て「ドレミファソラシド」の音階で聞こえる人たち、その絶対音感とは何か、という疑問を突き詰めていく本。
 特に、日本に絶対音感を持つ人が多い理由から、日本の音楽教育の歴史に踏み込んで行き、また一方で絶対音感を身につけた人たちは音楽を聞く際、左脳=言語を司る領域が通常より(?)活性化しているらしいという話から、認知科学なんかにも視野を広げて、とにかく総合的に「絶対音感」というものを調査していく。


 けど、そうした取材の果てに行き着くのは、結局「音楽とは何か」「音楽を聞いて感動するってどういう事か」というところなんですね。


 私にとって、とにかくも第一線の音楽家たちの言葉、それ自体がものすごく刺激的でした。
 音楽一本で生きている人たち、音楽に全精力を傾けている人たちには、世界がどう見えているのか、どう感じられているのか。そういう言葉をすくい上げてくれただけでも、非情に有意義だったなと。
 まあ、彼らの言葉を小説に置き換えることで、私自身いろいろ身につまされたり(笑)。


 個人的な印象としては、結局、絶対音感ってそこまで怪物的な能力じゃないんだな、と思ったりした次第なのですが。それと同時に、やっぱり音楽の世界の奥深さも同時に感じさせられたなぁ。みたいな。
 感化されやすい私は、すぐ「おし、じゃあクラシック音楽も聞いてみるか」とか思っているのでした(笑)。
 どうせ長続きしないくせにねw