空の境界・上

空の境界 上 (講談社ノベルス)

空の境界 上 (講談社ノベルス)


 映画化が決まったとかで、まあそれを機に読んでみようかな、とか思った次第。同人ゲーム月姫、そして『Fate/Stay night』のシナリオを手がけた奈須きのこ氏の長編小説。販売当初は売り切れ続出だったとか何とか。


 まず率直に思ったこと。文章が厳しい、というか端的に読みにくい。
 元が同人作品である事を差し引いても、さすがに悪文過ぎるきらいがあります。ところどころ、日本語がそもそも間違ってるとかあるし。


 そして、この作品の大元がHPでの連載小説だったそうですが、そのせいか基本的に連作短編集に近く、四つぐらいのエピソードがこの上巻に収められています。
 で、その最初のエピソードが、何が起こったのかも、何が言いたいのかもしたいのかも分かりにくい――というか分からない。
 そこが致命的にもったいないですね。
 もし、この作品の作者があの月姫』の人だという事前知識がなければ、8割方は途中で読むのやめると思います。それくらい、読みにくい。


 二つ目のエピソード辺りから面白くなってくるんですけどね。浅上藤乃さんだっけ? 彼女が出てくるエピソードあたりから、ようやく物語の結構が整い始める感じ。


 なんだろうなぁ。やっぱり、奈須きのこ独特のケレン味とか、独創、空気とかもあるし、面白い部分もあるんですけど……全体的に読みにくさがあって、それが邪魔をしている感じ。
 あと、もともとこの人の文章自体、PC上のノベルゲームだから読めてた部分というのも若干あります。背景やキャラの立ち絵があり、それらの情報を文章で述べなくて済むからかろうじて我慢して読める程度のボリュームに収まっていたとでも言いますか。
 あと、文字密度的にも、PC上で大き目の活字で、マウスのクリックでテンポよく読む方が多めに分量を読めるのかも知れません。
 どうも書籍にしてしまうと、彼の文章は段々胃にもたれてくる(笑)。


 そういう意味で、やっぱり、ちょっと読みにくさが先行してしまった、という感想でした。


 あ、あと。
 上巻最後のエピソードで出てくる建物ですけど。
 もうなんか、平面図とか出てきて、何だこれ探偵小説か? みたいな感じでしたが(笑)、まあフィクション上の建物に建築基準法がどうとか言うのは野暮だろうとは思いますが。
 あのビルに住んでる人たちってさ、洗濯物干せないよな(笑)。


 とりあえず、下巻も読む予定。