ジャガーになった男

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ジャガーになった男 (集英社文庫)

ジャガーになった男 (集英社文庫)


 何故か唐突に、戦記ものっぽいというか、大規模な戦場が舞台になった話を読みたくなったわけです。
 で、書店の文庫コーナーを眺めて回ってたら、見つけたのがこれ。


 たまには気まぐれも良かろうと思って読んでみたら、これが非常に面白かったのでした。


 ていうか、作者がものすごい楽しそうなんですね。
 遣欧使節としてイスパニアに赴いた日本の侍、寅吉が現地のイダルゴ(一種の傭兵)と意気投合、そのままイスパニアの兵士として戦場で活躍し、時には挫折しながらさらにはアメリカの大地にまで渡っていく、そんなご機嫌な話です(笑)。


 そもそも、ねぇ、日本の侍がヨーロッパの戦場で大活躍、なんて如何にも分かりやすい、日本人にとって胸のすく話じゃありませんか(笑)。現地の有名な将とぶつかって一対一の決闘したりとか、もうやりたい事やってるなっていう感じです。
 裏返せば安いエンタメ小説ってことでもあるんですけど、読んでいるとそんな冷めた感覚もどっか行ってしまって、あーこりゃ面白いや、っていう感想になってくるんですね(笑)。
 もちろんのん気なだけの話じゃなくて、男女の愛情と軋轢の話だとか、夢を追いつつ挫折していく男の辛さみたいな主題もあって、そこの描きこみもかなり緻密なんですけれども。
 そういう重い主題も込めつつ、でもやっぱりそこも含めて、娯楽として面白いなと。


 作者の歴史への造詣も深くて、けどその知識の部分も必要以上に重くなってないし。
 主人公の寅吉が、剣の腕も凄いし戦術家としても優秀ながら、人間としてだらしない部分とかも持ってて、その描き分けもきっちりされててなんか身につまされてしまったり(笑)。


 とにかく気持ちよく読めました。これは割りとオススメかもしれない。
 ……あー良かった、アマゾン導入してから、やっと普通にオススメできる本が紹介できたよ(ぉ


 それにしても、しばらくライトノベル漬けだったので、久しぶりにこういう一般向け(?)の小説読んだらまあ、女性の描写が濃厚すぎる感じがして困った。ていうか、まあこの作品、実は戦場の描写よりも女の体の描写の方が多かったような気もする。まあ気にするな。


 とりあえず、同じ著者の『傭兵ピエール』も読んでみようかな。