孫子
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- 作者: 浅野裕一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/06/10
- メディア: 文庫
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古典。一度読んでみたかったものの一つ。
「風林火山」や、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」などの有名フレーズでお馴染みの、世界最古の兵法書です。
大規模な軍事衝突なんかを小説で描写する参考になるかな、ぐらいの気持ちで読み始めたのですが、進んでいくうちにその徹底した現実主義に圧倒されてしまったりしました。
以前、ガンダムのHPやってた頃にも示唆してくれた人がいたりしたのですが、改めて「戦争というのは行政行為なんだ」という事を再認識させられた気分。軍隊による行動が一日伸びただけで、膨大な資金と食料を消費する、ゆえに戦争を長引かせるようなやり方は国を滅ぼす。まず何より、そういう経済感覚がなくちゃ戦争はできないというのは、普段戦争の派手でものものしい部分(あるいはそれを、華々しい部分と言ってもいいけれど)しかなかなか目にしない一般人としては、非常に新鮮な部分があります。
他にも、敵の状況を知るのに星の運行を見たり、その他占いやまじないに頼るのは誤りで、それらはただ知力によってのみ得られる、とかね。
とにかく、全編にわたって現実主義的で冷静沈着。優位な兵力によって危なげなく勝つことが最上だ、とか、普段エンターテインメント作品でしか戦争に接しない人間には意外に新鮮に感じられる言葉も多いです。戦わずに敵国の意思を挫けるなら、軍事衝突は避けるに越した事はない、とかね。
こういうのを読むと、理論ではなく、実際に事に当たった人の言葉というのはやっぱり重いな、とか思ってしまいます。このシビアさが今は気持ち良い。
……まあ、老子にある「道」(万物がそこから生まれそこへ返る絶対原理)を表すフレーズ「見れども視えず、聞けども聴けず」を引いて、「見ようとしても見えないし聞こうとしても聞こえないようなものなんだから、そんなのをアテにしてもしょうがない」って論法になってるのは思わず苦笑してしまいましたが。体育会系だなぁ、みたいな(笑)。
ともあれ、含蓄に富み、読んでいて楽しい本です。これはオススメかも。講談社学術文庫版は他作品よりもはるかに古い、竹簡に記されていた最古のバージョンを元に訳されています。そこだけ注意すれば、訳もわかりやすく読解部分も理解の助けになり、気軽に読むのに最適かと。