同人と商業出版――時代は確実に動いている(?)


 今月号の雑誌『ダ・ヴィンチ』に、奈須きのこ氏のロングインタビューと、氏をはじめとするTYPE-MOON関係の作品の紹介、また映画『空の境界』スタッフへのインタビューなどの記事が載っています。


http://web-davinci.jp/contents/guide/index.php


 まあ確かに、講談社ノベルス版『空の境界』は世間の話題になるほど売れたんだろうし、『DDD』も好調ではあるんだろう。
 とはいえ、やはり本業は18禁ゲームのシナリオライターの人なんだし、事実特集記事には18禁ゲームである『Fate/stay night』、さらには同人作品『月姫』の紹介文もあったわけなので、異例には違いないんだろうな、とか思うわけで。
 もっとも私は最近の『ダ・ヴィンチ』はまったく読んでもいないし気に留めてもいなかったので、ここのところどういう傾向の記事が載っていたのかとかは知らないわけですが……基本的にはこの雑誌の読者層は、村上春樹あたりから講談社ノベルスあたりまで、つまり大衆文芸からミステリなどのエンタメ小説、それに一部コミック作品を主に守備範囲にしていた雑誌のはずで……まあ近いといえば近いのだけれど、それでも奈須きのこ作品は少々毛色が違うんじゃないかと思うし。
 正直、この記事で初めて「奈須きのこ」の名前を知った人が、どういう印象を持つのかが想像できないというか。うーん。


 それともう一つ。こちらはメディアとしてかなりマイナーですが。
 漫画雑誌の『コミックREX』が、次号からの連載に先駆けて「東方プロジェクト特集」をやっているそうで。


http://www.ichijinsha.co.jp/rex/


 まあ、これ、買おうかどうか迷って結局買ってないんですが。


 でもなんか、こういうの見ると戸惑います。
 ZUN氏がそもそも商業的展開を嫌って、同人だからこそ出来る作品として東方プロジェクトを進めてきたとか、まあそういう話はひとまずおくとしても。
 TYPE−MOONの『月姫』といい、上海アリス幻楽団の『東方』シリーズといい、これら作品は同人ショップでしか買えないわけですよ。『ダ・ヴィンチ』でまるで普通の本のように紹介されていた『Fate/zero』にしても、ISBNコードもついてないし書店の扱いも普通はないわけじゃないですか。
 そういう作品を、商業雑誌が、他の一般流通している書籍や作品と並列して紹介しているっていうのは、どういう状況なんだこれ? っていう。


 たとえばこういう記事を見て作品に興味を持った人が、じゃあこれを手に入れたいなと思った時に、とらのあなとかホワイトキャンバスとか(笑)に行くなりWEBページ見ないと買えないわけでしょ? そんなもんを、一般雑誌が、購入方法の説明とかも特になさそうなのに記事として紹介してて、これどうなんだろうね? とか思ってみたり。


 つっても、別に「紹介すんなよ」って意味ではなくて、これらの作品が取り上げられたのは嬉しいわけです。どっちの作品も大好きだからね私。
 でも、なんか同人作品をどう扱うのかっていう事について、紹介する側はもう少し気を使わなくていいのかな、とは思う。
 というか抜本的にそれら作品をどう扱っていくか、業界の人たちはスタンスを明確にしていく必要に今後迫られていくのかもね、とか。
 今、パソコンなどのツールと、ノウハウや周辺状況の普及によって、ゲームなんかでもプロまがいの作品をアマチュアが作れるようになってきていて、場合によってはそれが下手な商業流通している作品より魅力的だったりするケースも出てきてるし、今後も増えていくんでしょう。PS2とかだけでなく、パソコンでゲームをする層も確実に増えて来てるしね。
 で、そういう作品でも人気が出れば、それは商業的に儲けが出せるコンテンツたりえるわけです。だから同人ショップが全国展開できたりもするわけで。


 逆に、プロ作家が、商業的事情を無視して好きなことやるために、同人でも作品出したりってケースもあったりする。


 けどそうすると、同人か、商業流通かの境目がどんどん曖昧になっていくわけなんですが、この両者の間の移行をどうするかとか、受け手にも分かる形で線引きというか、分かりやすく扱ってくれないと今後色々問題になるんじゃない? という感じ。
 とにかく、その辺の扱いがなんか最近すごく気になります。
 『Fate』のレアルタ・ヌアみたいに、いっそ商業として出しなおしてしまうっていうのも一つの方法なんですけどね。
 んー。いつか、家庭用ゲーム機で東方ができる日が来たりするのかなぁ?



  2月12日追記

 結局、コミックREX買いました。そうしたら、こちらの方はきちんと入手方法まで細かな解説が載っていました。ふむ、好感度1アップ(何


 とはいえ。やっぱりなんか、「同人ショップで買ってくれ」っていう説明を商業雑誌がしているのを見ると、変な気分ではあるのだった。まる。