断章のグリム2
- 作者: 甲田学人,三日月かける
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 文庫
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相変わらず、半端ないグロ描写が光る電撃文庫の異色シリーズです(笑)。
ちなみにこれ、褒め言葉です。一巻の感想でも書きましたけど、これはアニメ化できない。グロ過ぎて(笑)。マンガ化も厳しいでしょう。ビジュアル的にキツ過ぎるし。
アニメでもマンガでも出来ない表現が、小説として成立している。これは、こうしたキャラクターコンテンツの中で明らかなマイナー媒体である「小説」で、作品を書く事の必然性の一つになり得ているワケですよ。
「小説でしか出来ない事」としての訴求力があるという事で。だとすれば、これは可能性ですからね。
そういう意味では、結構重要なシリーズだと思う次第。
さて。
この作品を最初に知ったのが、ネット上の書評だったと記憶しているのですが。そこでこの作品を「学園異能」系の作品と紹介されていたので、しばらくの間そういう前提でこの作品を読んでいたのですけれども。
読んでいるうちに、この話の本質はそこにないのだな、と思うようになりました。
確かに、表向きで「学園異能」ものと分類され得る要素をこの作品はすべて持っています。
・学園が舞台で、主人公は学生であり
・日常の学校でのシーンと、非日常的なバトルのシーンとが並存していて
・各キャラクターは、それぞれが単一の異能力を持って戦いに臨んでいる
こうした外見上の要素を見る限り、確かにこれは学園異能バトルもの、に見えるのですけれど。
これ、話の構造、根幹部分は「ホラー」です。
学園異能ものであれば、敵側もまた同じ「異能」によって対抗してくるのが通例です。いわば、同じ土俵に乗ってそこで勝負する、というのが基本形式なわけです。
ところが、この作品の主要な異能力者たちは皆、発生する怪異現象の火消し役に過ぎない。
映画『エクソシスト』の神父さんの役割を果たしているに過ぎません。
事実上、このシリーズにおける本当の主役は、グリム童話の形をとって現れる様々な怪異現象でしょう。
というわけで、話の構造を追ってみると、ほとんど正統派と言ってもいいくらいのホラーなのだと思います。そういう意味では、ライトノベルとしては非常に珍しいタイプの作品なのかも知れないな、とか。
基本的に、ライトノベル界隈では、様々なジャンルの文法が「キャラクター小説」の皮をかぶって表れて来ます。一皮剥けばコアなSFのガジェットを積んでたり、ミステリの構成をとってたり、ラブコメだったり、とにかく色んなジャンルが混ざり合って居るわけで。
けどそんな中でも、ここまでコアな「ホラー」の形を取ってる作品は珍しいんじゃないかと思うです。
その辺が面白いよなぁ、と。
細かいところ。
とりあえず、作中で展開されるグリム童話関係のウンチクは、なんか少し浮いてる感じがするのですよねぇ。なんでなのか分からないけど。
まあ多分、童話や神話・聖書、文化人類学関係のウンチクを話す時の作中人物と、恐らくは作家自身とがどことなく楽しそうで、それが作品のどん底に暗い空気から浮いてしまってるんでしょうね。
知識ひけらかすのって、何だかんだで楽しいからさ(笑)。
あと、作中に、逆恨みした人の書いた手紙が出てくるんですが、これがやたら迫真の内容でびびった。
責任転嫁・逆恨みする人間のズレた感じがパーフェクトに文章になってて戦慄。この作家さんすげぇわ。
やっぱり何だかんだで、作家としての地力のある人は、色んな事できて凄いよねぇ。