キャラクター小説の作り方
- 作者: 大塚英志
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 文庫
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前回の『ゲーム的リアリズムの誕生』からの派生読書。
まず最初に、総評としてですが。これは実用書としてかなり使えます。まず何よりそれが重要。
特徴的なキャラクターの構成方法や、カード式ルーズリーフを使ったプロットの整理の仕方など、さすが実作者だけある、かなり有用なノウハウの伝授の書として評価できると思います。
とりあえずプロット整理法は私も実践してみようと思った。
そして第二のポイントとして、やはり「自然主義の文法」に対して「キャラクター小説の文法」が別途存在しているという指摘がやはり大きいと言わざるを得ません。
上記、東浩之の『ゲーム的リアリズムの誕生』もこの本のテーマを発展させたような印象で、そこに目から鱗が落ちた身としては、遡ってこちらもやはり評価しておく必要があるな、という感じです。
とりあえず上記二つのポイントから、一読に値すると自信を持って言える書籍。
で、以下細かいところ……っていうか不満点(笑)。
ていうかですね、私はそもそも、何かを論じる時に、自分の創作作品を引き合いに出すっていう姿勢が大嫌いなんですよ。まして、そこに「あの作品の意図は実はこうだったんですけど」とか自作の解説を関係ないのに織り込むとか最悪です。
もちろん、作家ってのは自分の作品について語りたい人種なんですし、私もしょっちゅうやりますけどね(笑)。だからこそ、かな。何かを論じる時の論拠として、自分の創作作品を持ってくるってのは上手くない。
だってそうでしょ? 「はぁ? お前の作品なんてクソじゃん」ってコメントされたら、もう何も言えなくなってしまうわけですよ。今まで論じてた事も一緒に犬死にしてしまう。
これが自分以外の作品を、論拠として客観的に取り上げていたなら、まだ論旨は生き残れるわけですが。「てめぇの作品なんて知らねぇよ」って言われたらどうしようもないわけで。
それ以外にも、なんか版元とのトラブルとか、実際のレーベル名を出してその姿勢を批判的に語って前フリにしてたり、なんか全体的に客観化できてない文章だなぁと思いながら読んでいました。私情がダダ漏れ。
その辺はプロとして、もうちょっとしっかりした仕事して欲しかったなぁ。内容は悪くないだけに余計。
この点があるために、ハウツー本として他人に勧めにくいです。