MSIgloo 第一話


 Gジェネ新作にシナリオ収録されるというので、せっかくだから予習がてら借りてきてみた。


 無論この二年ほどの間も、別にガンダム関係のアンテナをまったく立てていなかったわけではないので、大まかにどんな作品かという程度のことは知っていました。この第一話に登場するヨルムンガンドという兵器の名前も。
 とはいえ、特に今まで関心も持たないまま過ごして来たのは、端的に私の嗜好性と、この作品のコンセプトが別方向を向いているからでした。


 私がガンダムという一連の作品に感銘を受け、また期待していたのは、大きな世界規模での「時代」というものへのアプローチとして――我々が直面している「時代」というものに如何に立ち向かっていくかという視点においてでした。
 ガンダムという作品は、身近な家族とか恋愛関係とかいうミクロな関係だけの世界に留まらず、マクロな世の中の移ろいや問題に(一個人が)どう関わっていくかというテーマを常に持っている、最近では比較的珍しい作品群だと思うのです。
 だからまぁ、私が『ガンダムW』は結構のめりこんで見たのに、『ガンダムX』序盤にはイマイチ乗れずに見るのやめちゃったというのも、そういう部分の差なんだと思うんですが。


 つまり何かっていうと。私は別に戦記ものとしてガンダムを見てるわけじゃ、必ずしもないってこと。
 従って、一年戦争ジオン公国の「プロジェクトX」という非常に分かりやすいコンセプトを持ったこの『MSIgloo』も、本来そんなに関心を示すような作品ではないわけで。


 とはいえ、実際に作品を見る時には、そんな小難しい話は横にどけて、普通に楽しんで見ました。
 フルポリゴンの人間が動くのってやっぱり多少違和感を感じますけど、この作品について言えば気になって見られないほどじゃなかった。
 ていうか、作中の白人さんは「あーCGだねぇ」って感じだったんですが、一人だけ出てくる東洋人の人だけはなんかやけにリアルで、素で実写と見間違いました(笑
 なんだろ、肌の色が白すぎると無機質さが強調されてしまうんでしょうかね。


 戦艦やMSなどの兵器については、それらに比べるとやはりCGに向いています。なんだかんだで、ザクがこれだけグリグリ動く様が見られるというのはそれなりに感動。
 まあ、冒頭シーンでのサラミスは動きすぎだろ、とも思いましたが(笑
 こうしたSF設定による世界観を表すについては、「CGだからこそ表現できるリアリズム」というのもあるのかも知れないですね。アニメではここまで金属質な世界観を表現するにも限界があるでしょうし。


 ストーリーもそこそこ楽しみました。
 が、なんかやっぱり、根本的なある一線の部分で乗れなかったというのが正直な感想かな。
 それは例えば、間に挿入されるモノローグの一部とか、最後に主人公が書く報告書の文体が「××せり」「××されたし」みたいな古臭い言い回しだったりするところ。
 つまり、こういう戦記ものの話で盛り上がろうとする時に、未だに旧日本軍の、第二次世界大戦のコードが使用されるんですよね。
 そういうセリフ回しによって、軍隊っぽい雰囲気や感興が生み出せるのは確かにそうなんですが、あんまりあからさまにやられると私は気になってしまうわけで。だって、一応設定上、未来の話なのにさ。
 実際、初代ガンダムを作る時、富野監督はそういう「二次大戦っぽい」「旧日本軍っぽい」コードから出来るだけ離れようとしていた節がある。無論、その後たくさんのガンダム作品が出た現在の目で見れば、ジオン軍ってやっぱり二次大戦の軍隊っぽくはあるんですけどね。
 それでも初代ガンダムでは、あからさまにドイツ軍を彷彿させるような道具立てやネーミングは避けてましたよね。艦船の名前とかも、ファットアンクルとかギャロップとか、そんな感じで英語ですし。それが非富野作品であるOVAあたりで、イェーガーとかケンプファーとかシュツルムファウストとか、ドイツ語っぽいネーミング(つまり第二次大戦のドイツ軍っぽいコード)を露骨に入れ始めたのは周知の通り。


 けど、こういう趣向というのは、私のような偏屈な視聴者にとっては、悪い意味でミリタリーオタク的な感じがしてしまうのでした。
 別に悪くはないんです。楽しんで見られる分には。けど、そうした趣向がこの作品の間口と奥行きを狭めてしまって、「ただそれだけの話」に留めてしまう。
 そこが、物足りなく感じる部分でした。


 例えば、作中、主人公たちが今まさに地球に落とされようとするコロニーとすれ違う場面があります。
 その非道に彼らは動揺し憤るのですが……次のシーンではもう忘れられてるんですよね。
 そこで感じたやり場のない憤り、自分たちの属している組織が今まさに非道をしているのを見る気持ち、みたいなのを、30分の話を貫く背骨として話を構成できていれば、もっと深みが出てくるかも知れない。
 私が見たいのは例えばそういうアプローチの話なので。


 まぁ、全体の感想としてはそんな感じ。多分、こんな風に感じながら、小難しい顔でこの話見たのは私みたいな偏屈者だけでしょうけど(笑


 とりあえず、暇を見つけて全部見ますよ。Gジェネのためにね(ぇ