初音ミクについて思うことなど
最近、各所で話題になっている、声優さんの声を元に作られたシンセサイザー。
なんだかんだで、私も一応一通りは追いかけていたりします。最初にその存在を知った時はけっこう感動したし。
世間でもけっこう盛り上がっていたようですが、一時にくらべようやく少し落ち着いてきたようなので、この辺で軽く個人的な印象を書きおいておこうかと。
とりあえず、何が上手かったかといえばやっぱり、名前と絵によって、このシンセサイザーソフト自体をキャラクター化したことなんでしょうね。
実際、ブームになってから、初音ミクを描いた絵をネット上の絵師さんたちがこぞって描くようになりました。キャラとして認知されたということです。
しかし、流行った理由自体はそうした売り方が上手かったことに起因するかなと思うのですが、一方で、このシンセサイザーソフトの本質はもう少し違うところにありそうな気がしています。
出始めた当初、ニコニコ動画に上がっていたのは、とにかく初音ミクに有名な曲、知っている曲を歌わせるという内容が中心でした。が、次第に違う内容のものが出てきます。
つまり、自作のオリジナル曲を歌わせる、という内容のものがだんだんと増えてきたのです。
一番有名なのは、これでしょうか。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1097445
……あー、これ系に慣れてない人は、頭とろけそうになるから適度なところで帰ってきてね(ぇ
たぶんこれが、今一番聞かれているオリジナルの初音ミクの歌、なんですが。
注目すべきは、そういう歌が「初音ミク視点」の歌詞だという事です。
私がこのソフトの存在を知った時、最初に思いついた使用法は、「自分の作った歌を、実際に声アリで形にするためのツール」というものでした。
以前私も、とある人に頼まれて、曲に合わせて歌える詞を作ったことがあったのですが(その人が作っているゲーム内で使用するという話でした)、たとえばこのソフトを使えば、誰かネット上の声優さんなどに依頼したりせずに、比較的手軽に声アリでその歌を作ることができるわけです。
「誰かに歌ってもらった方が早くないか?」と思う方も中にはいらっしゃるかも知れませんが、そう簡単ではありません。ただ依頼するだけではなく、「この部分はこう歌って欲しい」とか、そういった自分のイメージに近づけるために注文を出したりしていると、実は膨大な手数の必要な作業です。相手に対して遠慮も働きますしね。
アマチュアが手軽にやろうとするなら、少々値が張るにしても、こうしたソフトを使用した方がはるかに楽です。「誰に気兼ねすることもなく、自分が納得いくまで出来る」という意味で。
世間でも主にそうした使われ方をするだろうなと思っていたのですが、上記の動画を見ていると、それだけではない事がわかります。
そこにおいて、ミクはツールではありません。歌の方が、ミクのために作られているわけです。
これは、発売元のクリプトンがこのソフトにつけた売り文句に合致します。すなわち、
「バーチャル・アイドル歌手を自宅でプロデュース」
ニコニコ動画では、X−BOX360のソフト『アイドルマスター』絡みの動画が大量にアップされているのが思い出されます。そこでは、ゲーム中の振り付けの映像を取り出し、そこに別な音楽をかぶせるという形で、ゲーム内のアイドルに無数の歌を歌わせる、ということが行われています。
そうして投稿されている関連動画はとんでもない数(1万を超えるとか)ですし、毎週ごとの集計で、アイドルマスター関連だけの動画ランキングを作っている人もいるくらいです。
さらに、初音ミク関連動画に頻繁に、こんなコメントがつけられてもいます。
「これとアイマスのシステムを合わせれば……」
彼らが夢想しているのは、おそらくこういう「場」です。
体格や背丈や顔つきを自由にエディットして作り上げた自分だけの「バーチャル・アイドル」に、初音ミクのシステムで作った自作の歌を歌わせてプロデュースできる、そんなシステム。
そして、ニコニコ動画のような多くの人に見てもらえる場にそれを発表して、互いにプロデュースしたアイドルを鑑賞したりランキング付けしたりする、そんな場を夢想しているのだと思います。
その夢は、かなり実現に近づいてもいます。
さて。差し当たり『アイドルマスター』にも初音ミクにも手を出していない私ですが(そしてこれを読んでいる方の大半もそうでしょうが)、ここからどういった傾向を見出すべきでしょうか。
実は、今後のエンタテインメントを左右するようなモノの萌芽が、ここにあるんじゃないかと思うのです。
恐らく今後、企業側が一方的に作品を発売し、消費者が一方的にそれを受け止めるだけ、というエンタテインメント市場の形は徐々に崩れて行くんじゃないかと思います。
技術の進展により、自宅のパソコンで、プロまがいの「作品」を作ることがどの分野でも技術的に可能になりつつあります。一方、受け手の趣味嗜好は拡散する一方で、作品を発表するプロの側がどれだけ心血を注いで作っても、それに満足できず不満を述べる受け手が必ず大量発生するというのが現状です。
受け手の欲求や希望は底なしです。そのうち、対応しきれなくなるでしょう。
ならばどうするかと言えば、「消費者自身が自分の好みになるように自由に中身を作れる」、そうした「消費者が自分で作る」ことをサポートする品物が徐々に幅を利かせてくるのではないかと、そんな風に予測しています。
アイドル歌手なら初音ミク、ゲームならRPGツクールのような形でもっと手間のかからないシステムのもの、などなど……。
初音ミクが、この手のシンセサイザー系ソフトとしては異例の売り上げを挙げている事からも、こうした「消費者の作品制作をサポートする商品」には潜在的な需要がまだまだあるんじゃないかと思えますし。
何より、どんなジャンルにせよ自分の手で「作品」と呼べるものを作り、それを多くの人に見てもらって評価してもらう、というのは誰でも多少は持っている欲求でしょう。
そこに需要はある。そうでなければ、同人分野があんなに活性化するはずはないので。
そうした大きな動きの端緒として、私は初音ミク関連の動きを現在眺めています。
ついでだから、いくつか気に入った奴を紹介(笑)。
★般若心経
http://www.nicovideo.jp/watch/sm996523
なにゆえw
★ひぐらし
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1028867
「ウソだ!」 無機質な声でうまく怖い雰囲気を出してる佳作であります。
★Fly me to the moon
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1053604
こういうしっとりした曲が得意らしいですね。
とりあえず私、この歌好きなんです。
★東村山音頭
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1093902
イッチョメイッチョメ。どう聞いても無理やり歌わされてます。
★天城越え
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1126456
演歌もいけるらしいです。機械のくせにコブシ回ってるのが笑えるw
★右からきたものを左へ受け流すの歌
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1019797
洗濯物干しながら、ご機嫌で歌ってると想像してみてください。
なんかこう、グッとくるものがありませんか?
ありませんか、そうですか。