さおだけ屋はなぜ潰れないのか


さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)


 ちょっと前に、非常に売れた新書。
 たまたま気が向いて購入してあったのを読んでみた。


 とりあえず、やたら面白かったです。
 会計学の入門書みたいな内容なんで、買ったは良いけど何となく敬遠していたんですが、読み始めてみるとこれがスリリングで面白く。
 やはり、日常のちょっとした謎を解決するところを糸口にしているのが、オーソドックスな手ですけど上手いですよね。特に表題になっている、さおだけ屋の話が、見事でした。多分、ミステリ作家の北村薫氏あたりは、これ読んで「ここには本格ミステリのスピリットがある」とか言ってそうです(えぇ
 洗濯物を干すさおだけなんて、一生でそう何度も買うものじゃない。つまり需要がない。そのうえ、仮にさおだけが折れたか何かで必要になったとしても、そのタイミングでさおだけ屋が通りかかるとは限らないし、大抵はホームセンター辺りに車で買いに行くだろう。そう考えていくと、さおだけ屋って儲かってるのか? 商売成り立ってるのか? というのが問題。
 私も、家にいる時にさおだけ屋が「た〜けや〜」とか言いながら通りかかるのを聞いて、頭の片隅で引っかかってはいたのですが、こうして改めて問われると確かに不思議です。
 そして、この疑問に答えが提示された時、普通に感動しました。なんて胃の腑にストンと落ちる答えだろうと。


 どんな答えだったかは、まあこの本の一番美味しい所ですのでここには書きませんが(笑)。気になった方は本書で。できればうちのアマゾンのアレをクリックしてくれると素敵です(黙れ


 まあ、後半になると、こういった謎解き要素は徐々に少なくなって行くのが残念でしたが、普通に読み物として非常に面白かったので、わりとお勧め。内容も気楽に読めて、そんな難しい内容でもないですし。


 何より、肩の力が入ってないのが良いのです。
 第二章で提示される謎が、郊外のベッドタウン、その住宅地のど真ん中にある高級フランス料理店の経営が成り立ってるのか、という内容で。別に雑誌とかに載るような味でもなく、交通の便も悪いし、値段もやたら高いから気軽に入れないし、そもそも客が入ってるのほとんど見たこと無い。そんな店がどうやって経営やれてるんだろう、という。
 ところが、著者の方、考えても全然わからず。ついにその店で食事をしてみようと決意するわけです。めっちゃ値段高いんですが。
 その決意を示す文。

 ある日、私はついに意を決して、この謎の高級フランス料理店に足を運んでみた。しかもランチではない。ディナーだ。数万円もかけてこの謎解きをするのだと思うと、まったく負けたみたいで悔しかったが、会計士としてこのお店の商売形態は無視できなかったのだ。

 なんでそこを太字で強調するのか意味が分からない(笑)。


 これはもう、「か、勘違いしないでよね! 会計士として、アンタの店が気になっただけなんだから!!」っていう風にしか読めないのですがどうか(ぇ


 ともあれ、こういう可愛げのある文を書く人の本は、大抵面白いというのが私の経験則。そんなわけで、ためになって面白い、新書ならではの素敵な本でありましたよ、っと。