断章のグリム 赤ずきん・下



 以下、ネタバレ注意。


 相変わらず、痛覚を描写させたら甲田学人氏は古今無双ですね(笑)。
 腹部に刃物刺された時の感覚の描写とか、読んでるだけでこちらの腹まで痛くなってきます。素晴らしくねちっこい描写でw


 そんな感じで、今回も血ぃドバドバの猟奇展開が満載でありました。まあ半ば以上それ期待して読むんだから良いんですがね(笑)。
 それにしても今回の下敷きになる逸話は赤ずきんなわけですが、蓋を開けてみたら思ったより良くある道具立てでした。子供時代の人形にまつわる怪談ってのは、比較的良くある話でしょうし。このシリーズでは珍しいかなと。
 無論読んでる間は、そんな事気にせずにわりとハラハラしながら読み進めたわけですが。


 あと、凄惨なシーンなのについ苦笑してしまったのは、瑞姫が犠牲になるシーンの前後ですか。
 斉藤愛視点で、彼女をかばって瑞姫さんが前に出て、「逃げろ」と言いながら障子を閉めたところで血しぶきが舞うと。普通、そこで場面転換したらそれまでじゃないですか。描写は打ち止めじゃないですか。プロットとしては、一つの状況を描き終えたんで別のシーンに飛ぶじゃないですか。


 次のページ開いたら、普通に腹刺された瑞姫さんの一人称が始まって吹いたんですけど(ぇ
 改めてそこで、これから殺されるばかりの人物の一人称が始まるんですかそうですか、みたいな。普通しないよね(笑)。
 まあ必要なシーンだったわけですがね。それにしても、さすがと言わざるをえないw


 そして、最後はなんだか後を引く終わり方でしたが。勇治君は失踪で、笑美さんが最終的にどんな感想を持ったのかも具体的な描写がなく。いずれこの辺の人物は、シリーズの中で再登場するのかなとも思います。


 寓話「赤ずきん」に対する解釈の話も若干出てきてました。まあ、かつて京極夏彦に狂っていた私には若干食い足りないんですが(薀蓄するなら、これの3倍くらいは分量が欲しい/笑)、それでも着眼点の面白さはあります。
 そう、確かに赤ずきんは、狼の事を最初から最後まで全然怖がってないんですねぇ。むしろ狼に恐怖感を持っていれば、あんな事にはなってなかったわけだ。
 その辺も含めて、色々面白く読み終えました。これでグロがなければ、ライトノベル読まない人にも比較的気軽に薦められるシリーズなのになぁ(笑)。