傭兵の二千年史
- 作者: 菊池良生
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/01/18
- メディア: 新書
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相変わらず気まぐれに読む本を決めている私。職場の休憩時間にぼんやり読んでました。
まあ、元々は今プレイしているMSTで使っているキャラが宇宙世紀の傭兵、というような設定なんで、その辺のことに興味が出てきたのと。
そういや『HELLSING』にも傭兵出てきたなぁ、っていうのと。
何より、今現在「軍隊」っていえば、国のために戦う兵隊のことが真っ先に思い浮かんで、それ以外の兵隊ってほとんど考える事すら稀なわけですが……つまり我々は、良く思うにせよそうでないにせよ「国民軍」っていうのは感覚的に分かるけれど、傭兵っていうのはあんまり感覚として分からない。少なくとも私はそうだったわけで。
その辺から、興味が湧いてきたわけですね。
実際この点については、著者自身が「はじめに」で述べています。
(前略)というよりか傭兵は古代オリエント以来、市民軍、封建正規軍、徴兵軍と並ぶ最も基本的な軍制の一つであった。つまり古来、戦争とは忠誠、祖国愛といった観念とは対極に位置していた傭兵たちによって担われていたのである。それがいつしかナショナリズムにより途方もない数の人々が祖国のために身を捨てる国民戦争へと変質したのである。であるならば、これら傭兵たちの歴史を覗けばひょっとしたら近代のナショナリズムの仕組みが逆説的にほの見えてくるかもしれない。
少なくとも現在の我々の(国民戦争を基準とした)価値観で言うなら、お金のために戦争をする傭兵という立場は、「死の商人」などと同じ、生き死にをお金に換算する人たちという否定的な感想をどうしても多少は持ってしまうかと思うのですが。
けど、たかだか200年もさかのぼれば、その傭兵たちの方が当たり前だったわけです。そこのギャップを埋められるなら、というのが読みながらの私の意識でした。
さて、この本についてですが。非常に読みやすかったです。
古代ローマから現在に至るまでの傭兵の地位や組織形態、戦形、さらに時代背景などについても非常にわかりやすく、要領よくまとめられていて、ヨーロッパ史の素養があまりない私でもするする頭に入ってきました。
それはもう、この著者の書いた西洋史の概説書とかあるなら欲しいかも、とか思うくらいに。
で。基本的に傭兵というのは、まぁ自分の故郷などで食いっぱぐれた人たちがなるのが通例だったようです。つまり生きるために傭兵になるわけです。
なので戦争が終わってしまうと途端に失業者になってしまうという側面もあったという事ですが。
一方で傭兵隊長から貴族扱いや、場合によっては国王にまで上り詰めるようなケースも無いわけではなく。傭兵としての誇り、というようなのを立てた人たちもいたし、長い歴史の中で色々といたわけで。その辺の事情を「へ〜」と思いながら読み進めてました。
まあ結果的には、絶対王政の下で段々と兵士が「王のもの」として直接国が管理するような存在になり、やがてフランス革命によって「国王のため」ではなく「フランス国民のため」に戦う国民軍が傭兵軍を打ち負かしたあたりで、傭兵制というのは事実上崩壊したと。
要約するとそんな感じでしょうか。
でも、何だろうなぁ、一冊読み通してみて、書斎派のヘタレである私としては、国民軍的な発想よりは、傭兵という発想というかやり方の方がすんなり理解できるよなぁ、っていう部分はありました。食っていくための最後の選択肢としての傭兵。日雇い労働みたいなものですしね、社会の底辺にひっそりと暮らしてる私としては、まあ理解しやすいわけです(ぇ
国民軍的な発想については……フランス革命の勉強でもしてみないと、すんなり腑に落ちないのかなぁ。機会があったら勉強してみましょうかね。
そんな感じで。とりあえず、非常にオススメの本でした。