考える道具


考える道具(ツール)

考える道具(ツール)


 哲学の入門書。
 ただし、この本の面白いところは、哲学をその理論体系ではなく、各哲学者が使った「思考方法」に着目してそちらを紹介しているところ。


 まあ確かに、哲学の取っ付きにくさの一つは、その理論体系の精緻さにあって。理論体系がしっかりしていればいるほど、初心者にとっては難しいし複雑だしでなかなか手を出しにくくなってしまいます。
 その点、この本は「今までこんな風に考えられていたのを、この哲学者はこんな風に考え方を変えてみたんだよ」っていう、その方法にスポットライトを当てて見せます。さらに、その「考え方の方法」を日常生活の場において使ってみせるという例示もしてくれるんで、非常に分かりやすいし取っ付きやすい。
 まあ、哲学の概念について説明していた舌の根もかわかぬうちに、恋人の浮気についての疑心暗鬼の事を「同じ論法で説明できます」ってやっちゃうあたり、けっこうシュールな本でもあるんですが(笑)。
 それでも著者は哲学を専門にしてる人だし、思ったよりしっかり要点は押さえているように読めました。総じて「こんな哲学入門書があっても良いんじゃない?」っていう感じ。


 また、その哲学者の生涯や、その時代背景についても分かりやすく説明されているので、その方面に対する基礎的な知識を学ぶのにもちょうど良いと思います。


 そんな感じで。哲学に興味はあるけど原典は難しくて無理、かといってあからさまな図入りの入門書とか読んでもあんまり頭に入らない、って人にはオススメかも知れません。