ムシウタ1巻


ムシウタ〈01〉夢みる蛍 (角川スニーカー文庫)

ムシウタ〈01〉夢みる蛍 (角川スニーカー文庫)


 アニメ化されたんでしたっけ。角川スニーカーでは比較的よく出ているシリーズ。
 世界観が結構暗めで、読んでてけっこう鬱々とした気分になりました(笑)。


 まあ暗いだけじゃなく、物語の主軸は主人公薬屋大助君と、杏本詩歌さんのボーイミーツガールなお話で、その部分の甘々さというか、初々しさというかはなんかそれはそれでとんでもない書きぶりなんですけどね。それと天秤のバランス取ろうとするくらい、周辺の設定とか人物とかが暗いのでした。
 とりあえず、いわゆる「異能バトルもの」なんですが、その異能をもたらすのが宿主に寄生した虫で。そしてその虫を潰されてしまうと、宿主は「夢」を奪われて欠落者と呼ばれる無気力状態になり、ほぼ完全に自我を失ってしまうという設定。
 で、その虫は宿主の「夢」を食べているので、いずれ宿主は虫に食い尽くされて死んでしまうという。


 まず、この作品は「異能バトル」ものとしては、つまりバトルシーンについてはそこまで突出して出来が良いわけではありません。
 このジャンルは本来、ドラゴンボール的な「戦闘力のインフレ」状態(とその行き詰まり)に対して、そうではなくそれぞれのキャラの能力に特徴や傾向を持たせ、その裏返しの「盲点」を突いて逆転するというような形でバトルを展開するために生まれた形式なわけです。
 が、この作品においては、各能力は一号から十号までにランク付けされ、またそれぞれの能力も「衝撃波」であるとか「音波」であるとかバリエーションはあるものの、バトル展開としてはそれぞれの能力を正面からぶつけ合うだけに終始しています。
 ですから、少年漫画的な「激突→劣勢→逆転」という推移があるわけではありません。バトルシーンをメインに読もうとすると、微妙に物足りないかも。


 この作品の本分は、そういう意味ではやはり「ボーイミーツガール」の部分に集約されるんですかね。そうした感情の動きの部分は特に重点的に描きこまれてますし、読み味も面白く感じました。
 まあ、あれだ、状況が悲惨であればあるほど、男女の情熱は燃え上がるってばっちゃが言ってた!(何だそれ
 ただ、いわゆる「セカイ系」みたいに内向きに閉じこもるだけでなく、たとえば「特環」「むしばね」というような組織の動き、その内情、それらの人との結びつきにも視線が振られてるのは良い事なんだと思います。


 とはいえ。個人的には、そこまで読んでて盛り上がる事も無く。
 まあ設定の暗さにあてられちゃっただけなのかも知れませんが。世界観にもそこまで引き付けられたという事もなかったんで、結構淡々と読み終えてしまいました。私も年をとったってことかも知らんね(ぇ


 まあ、ライトノベルとして一定の水準はクリアしてると思うので、オーソドックスなボーイミーツガールが読みたいなら手にとって見て損はないと思います。


 それにしても。
 気になったのは、エキストラというか、名無しの雑兵さんたちが状況の中でボコスカやられていく、その経過を描く無造作さがちょっと気になったりはしました。
 一般兵(いや、正確には兵隊さんじゃないんですけど)がやられるシーンっていうのは、組織行動によるバトルシーンで雰囲気を出すには非常に有効だし、そうした事をしっかり書くことで重みが出る事も確かなんですが……やりすぎると、ちょっと鼻につきます。
 凄い攻撃が来た → 主人公避ける → 一般兵がたくさんやられる、っていうシーンがあんまり何度もあったんで。これだと逆に、単なるヤラレ役にしかならず、かえって演出としては安っぽくなってしまっています。
 その辺がね、ちょっと気になったので。


 そんなところ。気が向いたら続きを読むかも知れませんが……微妙かなぁ。