断章のグリム 8・9


断章のグリム〈8〉なでしこ(上) (電撃文庫)

断章のグリム〈8〉なでしこ(上) (電撃文庫)


 痛覚描写に定評のある甲田学人のシリーズ、8巻と9巻。
 今回もその筆致は冴えわたり、読んでるだけで痛い痛い。
 特に、シリーズ通して共通である雪乃さんの断章――リストカットの痛みを炎に変えるという例のアレな技――も、何度となく繰り返されているわけですが、今回特に描写に磨きがかかってました。つまり、痛そう度が高まってました。
 もう本当に、この人はどこまで行くんだろう(笑)。


 今回取り上げられてるのは、「なでしこ」というグリム童話の中でもマイナーな話で、私は知らなかった話なんですが。
 それにしてももともとの童話の中ではタイトル通りなでしこの花が出てくるのに、この『断章のグリム』作中でキーになる花はずっとユリなんですよね。その違いが何か意味があるのかなぁとずっと予測しつつ読んでたら、結局そんな事はなくてちょっとガッカリでした。なんだよぅ、なでしこの花の何が不満なんだよぅ。そこは結構重要だろと思うんですが、違うの?(何


 前後2冊に分かれただけあって、いろいろと入り組んだ話でした。
 そして相変わらずメインヒロインの雪乃さんはひどい目にあうと。まあ元々自分からひどい目に遭いにそうな方に進んで行ってるんですが。それにしても、毎度容赦ないのでありました。


 そして、ラスト。
 ……いやぁ、この結末は。正直言って言葉が出ませんでした。
 自己犠牲とか、生き様とか、そんな言い方ではとても表せないです。このシリーズでしかできない、あまりにも凄惨な決着で。正直、圧倒されました。
 本当に、ここまで出来る作者はそうはいません。参った。


 私はまあ、グロはそんなに得意じゃないっていうか苦手な方なんですが、それでもこのシリーズを追い続けてるのは、この読後感が得難いから、なんでしょうかねえ。ここまで突き抜けるって、大変な事ですよ。
 いやはや。参った。


 そんなわけで。相変わらず容赦ねえ、それが魅力という感じでした。私は完全に降参だよ。