江戸を歩く


江戸を歩く <ヴィジュアル版> (集英社新書)

江戸を歩く <ヴィジュアル版> (集英社新書)


 最近マイブームの集英社新書ヴィジュアル版。
 著者の田中優子さんは江戸文化研究者さんだそうで。実は『百鬼夜行の見える都市』の田中貴子さんと間違えて本をチョイスしたのは内緒だ(えぇ〜


 で、中身は、東京のあちこちを江戸時代を透かし見ながら歩く、というような内容。若干郊外寄り。


 最初に書いておきますが、私は著者がこの本の中で繰り返す、「昔は良かった、江戸時代は良かった、現代は江戸時代の良さを踏みにじるばかりだ」、というような見解に同意しません。
 もちろん、江戸時代の“粋”なところは魅力的だし、現代に無い良いものもたくさんあった。そして対する現代の都市空間というのが、基本的にちぐはぐの滅茶苦茶だというのも私自身肌で感じている事です。多分、現在建設関係に携わってる会社の偉い人たちは、都市景観なんて広告を載せる場所だくらいにしか思ってないんだろうな、と時々感じたりはしています。独創的なデザインの建物を作っても、結局それを客寄せにして商売するという認識しかないんだろう、みたいな。
 大阪日本橋には等身大ガンダムの広告がデカデカとあるんですからね。私ニュースであれ見た時仰天しました。それは都市景観的にダメだろう、って(笑)。
http://shop.joshin.co.jp/shopdetail.php?cd=1665


 まあそういう風に私も認識はしているんですが。
 しかしね。ご年配の方は「昔は良かった」で済むだろうけれども。若い世代は、そんな現代の都市でこれからやっていかなくちゃならんのですよ。江戸時代を懐かしんでばかりもいられんのです。こんな都市なら、こんな都市なりに良い所を見つけて祝福してやらなくちゃ気が滅入ってやってられんのです。
 私も学生時代に友人にこんこんと説教されましたけれども(笑)、昔には戻れんのです。時代は前にしか進まない、というのは私自身、骨身にしみている事ですので。
 ですから、この本で著者が一貫してとっている「江戸時代は良かった、現代はダメだ」という見解には、私は基本的に距離をおいて、冷めた目で読んでいました。


 そこを差し引いた上で。
 著者の江戸時代への造詣の深さに触れながら、巻末の地図と照らしつつ読み進めた本書は、やっぱり楽しかったのでした。
 以前書いたように、私の中で割りと地理的な情報というのが苦手な領域で、実はいまだに東京都内の地名すら満足に頭に入ってない状態。東京都の白地図を見せられて「台東区はどのあたりか指さしなさい」とか言われても私全然答えられません。
 そんな私にとっての、地名を印象付ける一種のリハビリ(笑)としてまずは役に立ちました。
 また私の生まれた場所の近くも本書に取り上げられているのですが、そんな身近なところに結構見どころや、深い歴史・文化の跡なんかがあるものだなぁという、そういう発見も多数。


 とかく、時間(と資金)に余裕があれば、東京のあちこちを歩いてみたいなぁと、そんな気持ちになれる本でありましたよ。
 それにさすが専門だけあって、江戸時代の文化と、その活気を語るのが非常に巧みで、個人的に江戸時代への関心もさらに高まったように感じます。


 写真も美麗。日帰り旅行の行先をぼんやり考えながら読むのには、とても良い本だと思いました。


 とりあえず、大みそかの王子稲荷には一回行ってみたいなぁ。