愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎


愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎 <ヴィジュアル版> (集英社新書)

愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎 <ヴィジュアル版> (集英社新書)


 立てつづけに読んでいる集英社新書ヴィジュアル版。
 内容は、驚異の部屋(ヴンダーカンマー)という、当時の王侯貴族などが作った、とにかく古今東西の珍しいものを集めて展示した部屋、その興亡と、それらが成立した背景、そしてもちろん実際に展示されてたものの紹介、といった感じです。


 とにかく、いや、良いですね。うちのブログのタイトルからも分かる通り、私は心地よい混沌が大好きなので(笑)、こういう空間には憧れます。
 ワニのはく製に天球儀、人体模型に絵画に珊瑚に細工物。そこは持ち主の権勢を自慢する部屋であり、招待客を驚かし楽しませる宴会場であり、同時に森羅万象を網羅しようとする半ば魔術的な試みでもあったのでした。


 なかなか楽しく読む事ができました。何も考えずに、移動時間とかにちょこちょこ読むだけでもかなり楽しめると思います。それはもう、見るものを驚かし楽しませるのが目的のヴンダーカンマーを紹介しているわけですからね。
 無論、それ以上の読み方もできます。自分の中のヨーロッパ文化史の一側面に位置付けながら読んでも良いし。私は例によって西洋史の素養が少ないのでその辺はさっぱりでしたが。


 意外というか、私の思ってたのと違った点として、ヴンダーカンマーの発想と博物学とが分けて――というより、ヴンダーカンマーの発想を解体したものとして博物学の名前が挙げられていたのがちょっとびっくりでした。個人的に、ヴンダーカンマーの思想的背景が博物学だと思っていたので。
 けど考えてみれば、私の「博物学」のイメージって荒俣宏とか中野美代子とか、20世紀の学者(学者?)がやってる事をベースにしているわけで、言葉本来の意味とは違ってるのかも知れませんね。荒俣も中野女史も、嬉々として怪物だの妖怪だのを語りまくっているので、博物学全体もてっきりそういうものかと思ってました(それもどうかと
 実際には、それまでユニコーンの角だと思われていたものを、「これはイッカクという魚類のものである」と訂正する=そうした幻想を解体する役目を、博物学は担ったとのこと。


 そんな感じで。とにかくカラー図版も手伝って、いろいろと刺激的な本でありました。なかなか楽しかったですよ。