朝鮮史
- 作者: 武田幸男
- 出版社/メーカー: 山川出版社
- 発売日: 2000/08/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
昨今のネット界隈では、中国以上に良い評判を聞かない朝鮮半島ですが、一方で古代以来の日本史を考える上では、やはり朝鮮からの文物や人の流入、影響は無視する事は出来ません。
それにまぁ、こちらから向こうに、ちょっかい出した事も少なからずあるわけですし。
しかし、読んでいて若干、鬱屈した気持ちにならなくもない流れでした。中国に攻め込まれ、北方民族に攻め込まれ、日本にも占領されるし、戦後もアメリカとロシアの都合に振り回されるし。単独の国家を立てても、中国王朝や北方民族の国の属国の位置に甘んじないとイマイチ安定しない。
まあ地理的な条件もあるのでしょうけどね。すぐ隣に強大な国家があって、そこと地続きで、しかも半島ですからドン詰まりで逃げ場もないという。日本が大陸と海を隔てていた事はそういう意味では幸運だったんでしょうけども。
それにしてもさぁ。
一応言明しておきますが、私はいわゆる「嫌韓」とか、そういう朝鮮・韓国の人たちに対するあからさまに反対の立場は取りませんし、そうであるというだけで軽蔑したり悪しざまに罵ったりするつもりもありません。
その上で正直に感じたことを書くわけですが――この国の歴史を読んでて、どうにも、「お前らもうちょっと何とかせぇよ」と思ってしまうわけなのでした。
こう、目の前に危機が迫っているわけですよ。隣の国に攻め込まれそうだったり。その危機に対応するために一致団結しなきゃいけないのに、必ずそのタイミングで、内部分裂があるんですよ(笑)。日本に攻め込まれそうになった時もそうだし、日本の植民地に反対しようっていう運動が盛り上がりかけた時にもそうだし、戦後アメリカの占領状態で好き勝手されないように国として独立しようという運動が起こりかけた時にもそう。
揉め事はいろいろあるにしてもさ、とりあえず独立してからにすれば良いじゃんか。お前らケンカすんなよぅ、とずっと思いながらページをめくってました。
そういう意味で、「呉越同舟」っていう感覚はあまりない人たちなのかも知れません。いや、国民性を先入観で持って、安易に人を判断するべきではありませんが。
秀吉の朝鮮出兵とかもさ、そういうのは水際できちんと追い返してくださいよ、って。こういう言い方は無責任なのかも知れないけれども、当時とは時代的にかけ離れた後世の私としては、そんなのは上陸するかしないかの段階でコテンパンに全滅させてくれても全然構わなかったわけなのですが。
って言ったら韓国の人たちに怒られるかな。
近代に入っても……まあ、続々と進出してくる西洋に対して、後手に回ってしまったのは仕方ない。
ただ、後手に回った状態でようやく自分の手番が回ってきても、やっぱり内向きの権力闘争に終始してて、とりあえず植民地にされない程度の近代化を備えておく、という方に行かなかったんだなぁ。それはやっぱり、危機感を持てるかどうかの問題でもあったんだと思う。
ようやく1900年前後になって、学校が整備されたり啓蒙運動が出てきたり西洋文化の受容が起こったりするわけですが、あと10年20年早くそれをやってれば少しは違ったかもしれないのに、と思ってみたり。
もちろん、そういう感慨は、日本の免責のために言ってるわけじゃないんですけどね。お前らがしっかりしてれば俺らの植民地にならずに済んだんだろ、なんて事は、さすがに言えませんし。どこの悪役のセリフだって感じ。
1910年に公布された法律に、「犯罪即決例」というのがあって、「警察署長およびその職務を取り扱う憲兵分隊長に、三カ月以下の懲役・禁錮・笞刑などの刑に処すべき罪を即決できる権限を与えた」。つまり裁判なしで鞭打ちOKと。
……北斗の拳の世界じゃないんだからさ。聖帝サウザー級ですよ。私の中の仁星のシュウが号泣。
まあこの時代の事は、いろいろと意見の相違もありましょう。難しいなぁとは思いつつ……けど個人的には、韓国併合から以降の日本は、なまじ西洋近代化に成功したんで浮かれて、分不相応な事をやらかしたんだと思ってますよ。
しかし一方で、前々から「日本人に民主主義なんて100年早い」とか毒づいている私ですが、朝鮮史と比較した時に、江戸末期から明治の早い段階で、思ってたより理解はしてたんだな、という気にもなったのでした。それはアジア各国の平均的なペースから見れば、驚異的なぐらいに。
それはどうしてなんだろう……と思った時に、翻って日本の明治前後の事をもう少し勉強してみたくなったりもするのでした。
さて、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』でも読んでみるかね……。