人はなぜ恐怖するのか?


人はなぜ恐怖するのか?(ナレッジエンタ読本19)

人はなぜ恐怖するのか?(ナレッジエンタ読本19)


 タイトルが気になって、気まぐれに軽い気持ちで読んでみた。
 まあ私、先日ちょっと珍しくホラーっぽい話を書いてみたりもしまして。けれどやはり、ホラーやギャグなんかは漫然と書いていても上手くいかないもの。そこで、今後の自分の執筆にも役立つかと思って買ってみたわけです。
 著者はお化け屋敷のプロデューサー。自ら様々な演出で観客を怖がらせてきた人が明かすノウハウ。ちょっと面白そうじゃないですか?(笑)


 実際、いろいろと楽しく読み進めました。
 お化け屋敷作りの舞台裏から、お化け屋敷に臨むお客さんの観察から生まれた洞察とか。
 しかしやっぱり一番興味深く読んだのは、お客さんを怖がらせる実践的なノウハウ部分です。いろいろあるのですが、気になったのは「恐怖感は10分以上は持続しない」という話でした。著者自身の閉所恐怖症の経験もあり、またNHKの『ためしてガッテン』でもやってたそうで(笑)。
 これを小説執筆に応用するなら、つまり恐怖シーンを書くについてもあまり長くし過ぎるとかえって逆効果という事ですね。10分で読める程度のボリュームに抑えて、仕切り直しを入れていかないと効果が薄くなると。
 ……えーっと、10分で読める分量ってどれくらいでしたっけね? まぁ人によって個人差あるだろうけど。


 他にも、お客さんの視線を誘導して、こちらの演出に効果的に乗ってもらうテクニックなど。この辺はやっぱり、表現者なら意識せざるを得ない部分ですね。受け手というのは放っておいたらテンでバラバラな反応や、関心の向け方をするものですから、それを誘導していかなくてはならない。それらの工夫には逐一頷きながら読みました。



 それにしても、これくらい考えられ、工夫に工夫を重ねたお化け屋敷なら入ってみたいなという気もするのですよ。実際これ読んでると面白そうに思えてくるし(笑)、完成度の高いものに触れるのってやっぱり喜びですし。
 しかし、私自身がスーパー臆病野郎なせいで多分実現しません(ぇ  もう、一人暮らし始めてから、ホラー関係は一切遠ざけているという男ですからね。
 だって、一人暮らしで夜中に恐怖状態に陥ったら、誰も身近にいないからストップかからないですもの。同居人がいれば無理にでも気分変えられるけど。
 そんなわけで、この本は素晴らしいですが、相変わらず私自身はお化け屋敷を遠巻きに眺めるだけの日々が続きそうです。
 ……まぁ、大抵カップルで入るものらしいしな!!!