戦争の日本史4 平将門の乱
- 作者: 川尻秋生
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2007/03/16
- メディア: 単行本
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東京をテーマに読書をしていて、どうしても気になる名前のひとつ――平将門。
まぁ、つい先日まで荒俣宏『帝都物語』を読んでいたという事もあり、将門についても少し調べてみようと思って、手に取りました。
けっこう、従来の説に対して新説が多く出されていたりして、その「従来の説」を良く知らない私としては、いろいろ神経を使って読まざるを得ず。とはいえ、議論はそれなりにしっかりしていて、なかなか楽しめました。
とりあえず、後世の伝説などを基準に考えるとかなり存在感の大きい将門の乱なのですが、実際にはかなり早期に鎮圧されているんですね。「新皇」を称してから二か月あまり。
それに将門が興そうとしていた新国家の構想も、当時すでにガタが来ていた律令体制の模倣といって良いもので、あまり新しいものではなかった、と。
しかしそれにも関わらず、やはり将門の存在は大きいと著者は書くわけでした。日本史上、「新皇」などという名を名乗ったのは将門一人だったのだし。そして実際、そうした将門に当時の貴族社会が深刻なトラウマを負ったらしい事を、様々な資料を通して論じていく、その手際はなかなか面白く読みました。
また、史実として確認出来る限りで、最初に晒し首にされたのも将門であるらしい。後世の将門の首に関する伝説も、この晒し首のインパクトから生まれたのではないかという説も成り立つとう話で、伝奇大好きの私は大興奮でした(笑)。
伝説などの要素を調べるには、まず史実と伝説を切り分ける事が必要で……その上で、両者の関係性を浮かび上がらせる事が出来れば、それはそれで非常に面白く。
他にも様々な発見があって、楽しく読了しました。
相変わらず私、武将たちが戦をしてどうこう、という部分にだけは疎くて、そこだけやっぱり脳内で上手く像を結ばないのですが。恐らく私が、荒事が苦手なのに加えて、地理が苦手なせいもあるのでしょう。合戦のイメージとか、土地勘と結びつかないとどうにもこうにも。
そんなわけで、相変わらず武将などの本を読むにも伝奇的関心が中心な今日この頃でした。