数学ガール/乱択アルゴリズム
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2011/02/26
- メディア: 単行本
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新刊の発売日が気になる、私にとって数少ないシリーズ。
文系人間にも楽しめる、本格志向数学読み物。類書でこれ以上のものを私は知りません。
今回はアルゴリズムと、その解析・評価の話であまり馴染みのない話だったのですが、簡単な数学クイズから話を始めてくれるので最後までアウトラインは掴む事はできました。
私が、まがいなりにもプログラミングの真似事をした事があるとすれば「東方弾幕風」だけなんですが(ぇ その経験も多少役に立ったかな。
しかしこの作品の読みどころは数学部分だけではなく、どんな分野にも通じる、「学ぶ」という事に対する深い言葉がたくさん出てくるところが、とても読み応えあります。
そういう意味でも、広く読まれて欲しいシリーズだなぁと思ったり。特にこれから学生さんは読んでおくと良いと思う。
当初、出版前の段階で、ランダムさの評価の話とかが出てくるのかなぁと予測していたのですが、むしろアルゴリズムとの関係で、P≠NP予想の方に絡んでくる話だったので、びっくりしたり。
けど、以前用事があって同問題についてのウィキの解説を読んだりしましたが、その時ちんぷんかんぷんだったのに比べると、かなり分かりやすかったです。
本当なら、自分で実際に数式を書いてみて探求をしていくところなのでしょうが、私は自分の(趣味の)研究テーマをもう人文方向に定めているので、その辺は割愛しました。そういう意味では不精な読者という事でもありましょうが。
しかしそれでも、数学者の思考に触れられる、そこで何が行われているのかを肌で感じられる本として、毎回とても楽しみに読んでいます。
数学って、「答えが一つしかない」学問だなんて言い方をよくされますけれど、実は一つの問題にも取り組み方やアプローチは色々あるし、自分の興味のある方向に自由に研究の手を伸ばして行って良いという意味では数学もとても多様性と自由がある学問なのだなと、そういう事が伝わってくる書き方なのが、この分野の本では本当に本当に重要だと感じます。
キャラクターたちが、作を追うごとに少しずつ歩みを進めていっているのも感じられますし。それぞれのキャラクターの性格分けが、キャラ立てと同時に、数学の問題にいろんな角度からの視点を与える工夫としても成立していて。実によく考えられてる本という印象。
新規登場キャラクターのリサが、主人公ともう少し絡んだり、リサの物語にもこの本の中でもう少し一区切りがつくような場面があるともっと良かったのかなという気もしますが。
その辺は次回作を楽しみに、という事で良いのですかね。
ともあれ、堪能しました。至福の読書時間でしたよ。