数学ガール ガロア理論
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2012/05/30
- メディア: 単行本
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6月12日読了。
毎回、発売を楽しみにしているシリーズ。
小説仕立てで読み物の体裁をとりつつ、かなり深いところまで数学のレクチャーをしてくれる魅力的なシリーズです。
今回はガロア理論という事で、群論や体論がメインになってきます。馴染みのない話題だったので、ついていけるか不安だったのですが……さすが結城先生の考え抜かれた手際のお蔭で、どうにか最後までついていく事ができました。
特に、冒頭、ユーリが何となく始めた、誰でも興味を持てる「あみだくじ」についてのちょっとした話題が、最後の最後まで読者の理解を助ける話の基盤になっている構成が秀逸すぎて。
また、ガロア理論を理解するために、後々必要になってくる予備知識も、本の序盤の段階で巧みに、まるで洗練された推理小説の伏線のように散りばめられていて……これだけ綿密に組み上げた作者の方の苦労がいかほどだったのか、想像するに余りあります。
昨今、これほど丁寧な仕事に巡り合える機会はそう多くはないです。
また、群論という発想が、扱う対象の構造を探る手法として非常に秀逸な発想なのだなと、これも非常に目からうろこが落ちるような気持ちで読みました。見かけの違いにとらわれず、構造を見抜く事。さらには見抜くだけでなく、取り出した構造を《定量的に捉える》基準を考え出すと。
私自身が、自分で群論を扱う日が来る可能性は高くありませんが、しかしこの発想の切れ味に触れるのは、純粋に楽しいしきっと将来の自分の糧にもなり得る。
毎回、そういう手ごたえをくれるこのシリーズは、やはり凄い。
それに、作中でテトラちゃんが頑張ってるのが、私のような読者にとってかなり励ましでもあります(笑)。
彼女、いわゆる理系文系の分類で言えば、どちらかというと文系なんですよね。言葉の感触や語学について引っかかる時が多い所から見ても。そしていかにも数学らしい、前提条件の遵守という項目が抜け落ちやすいあたりも。
そんな文系のテトラちゃんが頑張ってるのを見ると、同じ文系として、読者私もなんとか話についていける気がする。
まあ、私はテトラちゃんに輪をかけて粗忽なので、多分彼ら彼女らと同じ場にいたら、早とちりや条件忘れをしまくってミルカさんに叱られっぱなしになると思うけど(笑)。
作中、ミルカさんが出して誰も引っかからなかった引っかけ問題、私は当然のようにあっさり引っかかりましたからね(ダメじゃん
ともかく、実に幸福な読書時間でした。
おそらく私はシリーズ続く限りフォローし続けると思うので、もし次回作があるようなら執筆頑張ってください、と書いておきます。
そんなところで。