カンピオーネ!


カンピオーネ! 神はまつろわず (カンピオーネ! シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

カンピオーネ! 神はまつろわず (カンピオーネ! シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)


 久しぶりに、ライトノベル読んでみた。
 神話伝説関係の薀蓄をからめたライトノベルは昔から好きで、色々と手に取ってみたりもしています。今回は、弟から「こんな作品もあるよ」と聞かされて、ほほぅと思って手に取ってみた。


 主人公の能力がいくつかあるのですが、そのうちの一つが敵である「神」の性質や素性を明かす事によって武器の効果を高めて戦う、みたいな設定らしく。宗像教授っぽく比較神話学の薀蓄を語るたびに、剣が生成されて相手を攻撃するみたいな、なんかすごい事になってました(笑)。
 まぁ、神話伝説とかを色々勉強してると、そうやって調べた結果を滔々と語ってみたくなるもので。しかしそれを小説などの娯楽小説形式にしようとすると、エンタメ性と両立させなきゃいけなくなって、それで色々手を変え品を変え工夫するわけです。その気持ちはとてもよく分かるわけですが、なるほどこういう手があるか、とは思いました。


 あと、具体的な東京の地名がはっきり出てくるのは面白いと感じました。なんとなく、具体的な地名は出さなかったり、架空の地名で済ませてしまったりしてしまうところですが、あえてリアルな地名が入ってるというのは、うまくハマれば面白くなる要素かなと思います。ただ、どうせ出すなら、無理のない範囲でもっとストーリーと絡めたり、より土地勘を活かした展開を織り込めたりできればもっとよかったのにな、とか。


 ただ、やっぱり作品のクオリティとして評価すると、ちょっと食い足りない感はありました。
 いや設定は素晴らしいと思うのです。主人公の立ち位置、ヒロインの背後設定とかも手抜きせずにちゃんと作ってあったと思いますし。作中設定用語の質も良いと思うのですが。私が気になるのは描写。


 たとえば、周囲の気温が急激に下がった、っていう記述があるんですよ。けれどそれだけだと、単なる説明文だよなぁと思ってしまって。やっぱり体感の描写がないと、読者に臨場感が伝わらないのですよ。気温が下がったなら、それに合わせて肌で感じる寒さがどの程度なのかとか、急に冷たい空気を吸い込んで肺や鼻の奥に痛みや痺れが、みたいな描写とか。とにかく、読者に作中で起こっている事を、あたかも体感したかのように伝えるのが、描写だと思うのですよ。
 ライトノベルにそんなの求めるのが間違いだ、っていう人もいると思うんですけど。しかしね、甲田学人先生みたいな前例もあるので(笑)。痛覚描写が凄すぎて、読んでるだけで読者が痛みに震えるというw


 いわば、そこで読者に体感を想起させられるというのが、小説がアニメや漫画に勝てる数少ない優位な点なのだと思うので、もうちょっと頑張って欲しいなぁと。ライトノベルを読むと、そのように思う事は多いわけでした。



 あと、主人公が少々オーバーなくらい、女性と接近・接触をとる事を忌避していて、またメインヒロイン以外の女性キャラがまた、主人公が女性とお近づきになる事を潔癖症なくらいに見とがめ責め詰るという、全編にわたって展開されるそういうやり取りが、さすがに強調され過ぎててはっきり食傷でございました。というかそれ以上に、なんか現代日本の病巣を見せつけられてるみたいで、ぶっちゃけ私のような男にはツライです(笑)。なんでみんな、そんな強迫観念的なんだよ、という。


 そんなこんなで。
 まぁ構想も、また薀蓄部分もそこそこ楽しくはあったのですが、総合的に作品にのめり込めたかというとちょっと微妙。次回作も6:4くらいの確率で読まないかも。