博士の異常な愛情



 実に酷い映画でした(何
 一応喜劇、コメディという事なのでしょうが、キャラの滑稽さとかユーモアとかより、ただひたすら悪化する状況に対して、半笑いみたいな、引きつり気味の笑みをずっと浮かべながら見てたと思います。
 まったく事前の知識なしに見始めたので、何が起こったのかという状況を大体把握できたのは映画開始から30分経ったあたり。そこから、状況は間の悪い偶然によって悪化し続け。見ている側としては、うわぁ、とドン引きするばかり(笑)。


 NHKが作った『映像の世紀』ってドキュメンタリーがあるんですよ。20世紀の、一次大戦や二次大戦を中心とした、戦争中の戦地の惨状や虐殺などの様子を、エモーショナルな音楽に乗せて流しまくるという、何とも鬼気迫る作品なんですが。
 ドキュメンタリー『もののけ姫はこうして生まれた』に、その『映像の世紀』を宮崎駿スタジオジブリの人々が一緒に見るシーンが出て来て、その中で宮崎監督が、「ここまで立て続けに、度を越えた破局シーンを見続けていると、快感になってくる」という意味のコメントをしていたのが妙に印象深く残っているのです。
 この『博士の異常な愛情』で自分の中に湧いてくる笑いも、多分それと同種の快感に近いような気がしたり。
 なんかやっぱり、落ち着かない笑いであり、また視聴後の気分も惨憺たるもので、何とも言えないものがありました。まぁ、もちろん、見た者をこういう気分に否応なく追い込む、という事が出来たこの映画はつまり傑出した作品なのですけれども。


 この映画は、無論東西冷戦を背景にしたストーリーなのですが、だからといってこれを「過去の危機を題材にした過去の話」と割り切って見る事は、私にはできませんでした。取り返しのつかない事態が起こる、その直接のきっかけを作ったアメリカの将軍の、その行動の動機がとんでもない与太陰謀論だった辺りとか。その他もろもろ。
 いずれにせよ、これが優れた作品であるという点については十分に肯きつつ、それにしても感想の書きにくい映画だなっつーか、この視聴後のもやもやした、不満とも戸惑いとも違うビミョーな消化不良感をどうしてくれようか、というような。
 ともかくコメントに困る作品でありました(笑)。


 ともあれ、大体キューブリックの有名な作品はこれで見た事になるのかな? 他にも映画史的に見ておいた方がよい作品があるかどうか。別に私は映画通になりたいわけじゃないので、どこで切り上げるかが考え所です。
 ニコニコ動画とかでよくネタにされているという意味では『フルメタルジャケット』とか見た方が良いのかなという気もしますが、そういう基準で見る映画を決めるなら、『コマンドー』とかも見なきゃいけなくなるからなぁ……w