バッカイ


バッカイ――バッコスに憑かれた女たち (岩波文庫)

バッカイ――バッコスに憑かれた女たち (岩波文庫)


 現在、岩波文庫で新刊として手に入るギリシャ悲劇作品はこれが最後。多分。そういうわけでエウリピデスの遺作と言われるバッカイであります。


 バッカイとはディオニュソス信者の女たち、あるいはディオニュソスに憑依された女たちのこと。オウィディウスの『変身物語』を読んで、このバッカイたちの猟奇的極まりないエピソードに強烈なインパクトを与えられて以来、やはり気になっていたわけでありまして、そのバッカイたちのより詳細な描写があるのなら、という関心で読んだわけなのですが……うん、正直よけい分からなくなりましてな(笑)。
 いい加減、ギリシャ悲劇というのが徹頭徹尾理不尽な話だという事はあらかじめ予想できるようになったとはいえ、それにしてもあんまりにもあんまりな展開で、どうにもこうにも。スプラッタホラーかよ、と思わず心中でツッコミを入れたものの、よくよく考えるほどに、スプラッタホラーなどよりもっとおぞましい何かである事は明らかです(笑)。
 いや本当……なにこれ。


 ディオニュソス、そしてバッカイというのが一体どういう存在なのか、何なのかというのは、もし将来的に機会があったら自分なりにもう少し調べてみても良いかなと思います。それだけの魅力のあるテーマだと思う。
 それはそれとして、善でも悪でもないディオニュソスという存在を描き切った、エウリピデスのこの作品は素晴らしいものだとはやはり思った事でした。このような「割り切れなさ」の提示は、創作作品の大きな魅力だと思っているからです。


 そんな感じで。とりあえずギリシャ悲劇を巡る読書はこれで一区切りとしたいと思います。ちくま文庫にはギリシャ悲劇の全集も入っているのですが、差し当たっては岩波文庫で入手可能なものを中心に絨毯爆撃、というスタイルを保ちたいと思います。
 さて次は……本当はそろそろ古代ギリシャから離脱したいんですけど、もう一辛抱してギリシャの喜劇作品を少し読もうかと。
 以降はまた来年、ですかね。