マーニー


マーニー [DVD]

マーニー [DVD]


 ツイッターのフォロワーさんに教えてもらった、ヒッチコック作品。盗癖を持ったヒロインを妻にし、その内面に迫っていくというちょっと変わったシナリオの作品。


 とにもかくにも、作品中でこんなにフロイト先生の名前が出てくる映画ってのも珍しいのではないかと(笑)。字幕ではそうでもないですけど、話されてる英語聞いてるとポンポン出てきます。
 ヒッチコックって『サイコ』にしても、また『めまい』の高所恐怖症にしても、そういう精神疾患の類いをモチーフにする事多い気がします。『バルカン超特急』にもちょろっとそんなモチーフ出て来てたから、かなり古いころからでしょうかね。この『マーニー』は特にそういう傾向が強くて、「トラウマ」が大々的に主題に置かれてます。
 そんなわけで全体的にけっこう重い話なわけですけれども。んー、やっぱこんなテーマの話を60年代の時点で作られたら、そらかなわんわなぁ、と思わされた次第でした。日本はまだこの頃高度経済成長の真っただ中ですか、精神の病に関する本格的な関心が高まるのは30年くらい後ですものねぇ。


 あと、主演のショーン・コネリーについて、素朴にすげぇと思ったというのもありました。本作の主役は、盗難にあってその犯人のヒロインを掴まえて、半ば脅迫っぽくそのまま結婚し、時には嫌がるヒロインを無理やり押し倒すシーンなんかもあったりして、視聴者の心証を悪くするシーンがけっこう多いのですけれど。全体を見た時に、最終的にはこの主役男性に対する悪印象ってそんなに残らなくて。本作を紹介してくれたフォロワーさんも女性だったことを考えると、女性視点でもそんな感じなのだろうなと。
 DVD付属のメイキングで、そういう脚本上で主役男性に悪印象が起こりかねない場面について表現を緩和する進言をしたそうですが、ヒッチコック監督は「そこを何とかするのが役者の仕事だ」的に応じたという事で。で、実際にショーン・コネリーはかなり何とかできてしまっているのでした。
 映画をもう30本以上連続で見ていますが、「役者すごい」と率直に思う機会って今のところそんなに無かったんですけど、この作品ではひしひしと感じたのでした。脚本単体では出来ない事を、役者の演技力が実現するって事があるんですねぇ。


 そんな感じで、ドカンと大きな感銘や印象が残る作品というわけではなかったですけど、いろいろと刺激になった作品でした。