Gのレコンギスタ視聴後感想




 最終回まで見終えました。色々と思うところはありますが、とりあえず見終えた直後の感想を軽く。


 とにもかくにも、リアルタイムに富野監督の新作を見る事が出来た、というだけで幸福感がいっぱいだった、という身も蓋もない感想が第一であります(笑)。副読本なし、ぶっつけでいきなり本編だけ見るとこんなに混乱するのか、っていう。放映中、ツイッターなどで「さっぱり分からん」という感想はたくさん見ましたが、「ストーリーが分かった」と言い切ってるツイートは一つも見なかった気がしますw


 正直なところ、ツイッターなどでリアルタイムに感想を共有しながらアニメを見る、というスタイルがかなり浸透している現状にあって、富野監督の作劇がそういう視聴スタイルと合わなくなってる部分はあると思うのです。私も同じ時期に『艦これ』のアニメ見ている間は、放送見つつ適宜ツッコミ見たり、皆の反応を追いながらワイワイ言って見てたんだけど、『Gレコ』だとそういう見方がすごいしにくい。なんでかって、一分一秒の間に提示される情報量が多すぎて、片時も画面から目を離せないので、実況どころじゃないわけです(笑)。
 で、一話の中に語るべきことが多すぎて、視聴後に言いたいことを言おうにも、全部言い切れないというか。私自身、そういうもどかしさをけっこう感じながら見ていた部分はあります。
 それでも、ツイッターでGレコ感想を見たり呟いたりしていた時間もすごく楽しかったんですけどね。ツイッターで皆が気づいたことを適宜流したり、指摘されたりっていうのが無かったら、多分もっと混乱していたと思いますし。
 正直、今のアニメに慣れている人には、4クールで、情報を二倍に薄めてやるくらいの方がちょうどいいと感じるかも知れません。
 とはいえ、この特濃な詰め込み方だからこそ、富野アニメならではの酩酊感もあるわけで、御大ファンとしてはやはりこれくらいが楽しいという感じもしてしまう難しさなんですが……w


 好きか嫌いかで言えば、私はこれくらいの濃さのある作品の方が断然好きです。内容の圧縮ぶりだけでなく、様々な要素が詰め込まれているので見るたびに違う発見があるし、少し見方を変えるだけで全然違う情景が見える。意味や味わいも出る。再視聴再々視聴に耐えるだけの、そういう濃度があるからこそ、「20年後も通用する」「50年見られる」という富野監督の豪語もあるわけですから。
 私のような物語考察が趣味の一つであるような偏屈男にとっては、まさにこの『Gレコ』一本だけで「あと10年は戦える」わけです(笑)。そういう豊穣さが嬉しい。


 画面内にある情報量も本当にすごくて、メインになるキャラクターが中央で芝居している奥とかで、別な人物が全然別な事している、とかいうのが常に動いているから、起こっている事件や状況も常に立体感がある。
 たとえばトワサンガで、ガランデンのMSが出撃していく際に、編隊のうちの1機だけがバランス崩して艦の表面に機体擦って行ったりしてるんですよ。劇中では誰も言及してないけど、それを見ている視聴者は「あ、発艦失敗した奴がいる、ヘタクソめ」ってなる。それだけで、大量に存在している劇中機体の一つ一つに「人が乗っている」「ハリボテじゃない」っていうリアリズムが出るっていう。
 近年のアニメで、モブキャラが棒立ち状態でただやられていくっていうのを多く見る中、こういうクオリティを保ち続けているというそれだけで、もう見応えとしては十分すぎるわけでね。


 メカ設定なんかも素晴らしくて、ジャイオーンの顔の表現やバックパック(ビッグアーム・ユニットだっけ?)、ユグドラシルのテンダービーム、ジーラッハの一本足の外見、ガイトラッシュのビームマントなどなどなど……これまでのガンダムになかった新機軸のメカアクションアイディアが目白押しで、さすがはかつて遠隔攻撃端末(ビット、ファンネル)のアイディアを世に送り出した富野ガンダムだけはある、という感じでした。
 こうして富野監督が「ガンダムで出来ること」を増やした事で、今後作られるであろう非富野ガンダムが出来ることも相当増えたわけで、『Gレコ』によって確実にシリーズ、コンテンツとしての「ガンダム」の寿命は十年以上延びたろうと思います。
 そういう未来志向なところと、かつての宇宙世紀のMSとかを劇中にちらっと出して見せたり、あるいは一部メカデザインがVガンダム作中のデザインを想起させたりっていう、既存ファンへのくすぐりも散らしてあったりして、なんだかんだでサービス精神旺盛だよなぁと思うし。総じて、そういう全体的な目くばせの行き届きぶりとか、本当感心してしまうのでした。


 そんなわけで、とにかく映像体験としての楽しさが前面にあって、とにもかくにも幸福な視聴体験だった、というのが第一です。これについては、書き始めたらいくら紙面があってもキリが無いくらい。
 実のところ、当ブログでもちょっと前に、Gレコで組み込まれていると見られる過去作オマージュについてちらっとメモ書きしたりしましたが、中盤くらいから一旦、そういう見方をほぼ中止にしていました。あまりにも映像を楽しむのが幸福すぎて、作品分析とか解釈とか批評とか、そういう事をする気がかなり失せてしまった(笑)。
 とにかくGレコをこれから見るという方は、まず何よりも目の前の映像に没入する事を最優先にしてほしい、と思います。解釈だの批評だのは後でゆっくりやればいい。そういうのは、頭の処理が追いつかないくらいの映像の奔流を味わってからです。じゃないともったいない。



 その上で、私なりに『Gレコ』のテーマとか、射程、目論見、切り口なども提示できたら良いなと思いますので、今後何回かにわたって、Gレコを読み解くための視点に関する記事を当ブログにアップしたいと思います。時間を見つけて少しずつ進めるので、多少スローペースになるかとは思いますが……気長にお待ちいただければ幸い。


 とにかく今回は、初見でのストレートな感想だけ述べてさせていただきました。最高の視聴体験をありがとう、という気持ちでいっぱいです。
 ではでは。