殺人狂時代(岡本喜八監督)



 チャップリンの同名映画じゃなくて、こちらは邦画。まぁいずれチャップリンも見るけど。


 とりあえず、久しぶりにゲテモノな感じのものが見たくなったのです(笑)。それでTSUTAYAを物色してたら、いかにもヒドい感じのあらすじを掲げる本作品を見つけたもので、ウキウキしながら借りた次第。
 ……で、そしたら想像以上のゲテモノぶりで、若干食傷しました(笑)。


 いや本当、すごいんですよ道具立てが。冒頭から、不適切な表現てんこもりの昭和風精神病院描写に、ナチス残党、狂気の暗殺集団、スピリチュアル、催眠術、拷問、その他その他、よくもまぁこんなにゲテモノばっかりそろえたなぁと感心するような具合。昭和という時代のバッドテイストがてんこ盛り。
 そこに仲代達也の正体をつかませない演技と、天本英世の堂々たる怪演が加わって、ななだかすごいことになっちゃっているわけで。なんだこれw


 いやでも、ね、これが面白かったのですよ。ものすごく。あまりにもあまりなB級テイストがするんだけど、にもかかわらず、というかむしろそれ故に底抜けに面白いのね。
 やっぱりさ、日本でハリウッド的なスペクタクルアクションやっても、アメリカには勝てないわけですよ。日本であれに匹敵するスタイリッシュさって、やっぱり限界がある。
 しかし逆に、そこに自覚的になって、むしろゲテモノやイカガワシイものをてんこ盛り状態にして、「何でもアリ」な空間にしてしまう事で、ハリウッド的スペクタクルが混ざり込んでも違和感なくなるんですよ。火薬による爆発とかアクションシーンを「日本人がやってる」事に違和感がなくなるの。これは、計算してやってるとすれば、やっぱりすごい。
 実際、不覚にも終盤になって、仲代達也演じる主人公がだんだんとカッコよく見えてくるんです。ド近眼で水虫持ちの、ダサさMAXな人物だったはずなのに。そこが凄い。


 実際日本人の想像力って、正統派にスタイリッシュを目指すよりも、あえてジャンクなもの、ゲテモノ、猥雑なもの、カオスなものを取り入れた方が活性化するような気もする。
 いずれにせよ、このぬけぬけとした味は悪くないです。いっぺんで好きになりました。


 なんか最近は忘れられかけてる気がしますが、昭和エログロナンセンスとその系譜って、ずっとあったんですよね。今だと大槻ケンヂとかが辛うじて継承してるような。私は以前たまたま、戸川純のアルバムを、特に何の心の準備もないまま聞き始めてしまって、あまりの衝撃に「うぎゃー! うぎゃー!」ってなったんですけど(笑)。けど実は今日のアニメとかオタク文化にもかなり影響与えた分野だったハズだし、あの辺もいずれ余裕があったら掘り返したい感じもしています。まぁ、そんな余裕ないだろうけど(笑)。


 そんな感じ。実のところ、邦画については黒澤明監督作品、あと小津安二郎作品くらいしか見るもの思いつかなくて、他に何見たらいいんだろうかと迷ってたんですが、岡本喜八監督の作品は見ても良いかなと思えました。ようやく邦画を巡る端緒を掴んだ感じです。
 というような。