オペラ座の怪人(1925年版)


オペラ座の怪人 [DVD]

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 白黒でサイレント映画な『オペラ座の怪人』。怪奇映画見るの、けっこう久しぶり?


 なんでしょうかね、サイレント映画で音声入ってないせいなのかどうか、役者さんが全員、すごいオーバーアクションで、大ぶりな演技のままテンポよく話が進むので、間延びせずに楽しく最後まで見ることができました。セリフが字幕として適宜入るのも良いテンポ作りになってて。ホラーと言いつつ、所作が大ぶりなせいでけっこう笑ってしまうところもあったりします。
 で、オペラ座の怪人ことエリックの隠れ家に仕込まれた数々の、忍者屋敷のごときギミック、道具立て、仕掛けなどなどが目まぐるしく作動して事態を動かすのも面白いです。なんかこう、一昔前のアクションRPGのギミックみたいよね(笑)。
 そんな感じで、音声による演出が封じられてる分、見た目に訴える様々な手練手管が存分に楽しめるわけで、非常に楽しい視聴でありました。


 視聴中何を考えていたかと言うと、まぁ、結局中盤辺りまで、かなり怪人エリックの方に感情移入してたんですよね、実は(笑)。これはもう、『キングコング』見てた時にコングに感情移入してたのと気分としては変わらないわけです。彼の悪事は許容はできない。ただ、外見で好かれることがほぼ期待できないだけに、それ以外で考えられるあらゆる事でヒロインの気を引こうとした挙句、ものの見事にドン引きされて恋に敗れていく、そのいじらしさに、何やらチクリとした一抹の同情というか、そういう感覚が残るわけですよw
 大体こういうキャラってそういう描かれ方したりしますよね。悪人に徹してれば良いものを、たまに真っ当な感情や行動を表に出したがために破滅したりするんだ。わりとそういうのに弱いのですよねぇ、私。
 実際、怪人の行動とかも微妙に憎めないわけです。水遁の術には大笑いしたし。ちょっとした所作が妙に人間臭くて笑ってしまったりする。
 怪人であるがゆえに、その行動のちょっとした滑稽さに妙な親しみ感じてしまうという意味では、『仮面ライダー』のショッカーの怪人に近いかも知れない(笑)。見終えて、何とも言えない気分になりました。


 古い怪奇映画って、どうも「割り切れなさ」が仕込まれてるような気がします。『フランケンシュタイン』もそうでしたが、あの怪物は社会一般の価値観から見れば共生する事はあまりにも絶望的なんだけど、あの怪物自体には「悪意」は無くて、また望んで生まれてきたわけでもない。単に意思疎通が出来ないだけだったっていう。
 本作の怪人エリックにも、やはりそういうニュアンスが載っていたように思います。中盤で彼の過去の犯罪歴が明かされるわけで、そういう意味では彼は「悪人」として描かれるけど、エリックがヒロインに抱いてる恋心は本物であることも本人が熱心に口にしているわけで。
 ……と書いているうちに、なんかスーパーマリオクッパ思い出してきたw


 なんか、そういう微妙な割り切れなさを、白黒時代の怪奇映画から感じることが多い気がします。シンプルに善悪で切れないモヤモヤとした感じも、怪奇の一部なのですかね。
 そんなことを思いつつ。