失楽園(上・下)


失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

失楽園 下 (岩波文庫 赤 206-3)

失楽園 下 (岩波文庫 赤 206-3)


 妖怪だの悪魔だの神話伝説だのにのめりこんでいた高校時代、「いつか読むぞ」と思ってた古典作品がいくつかありまして、その中でも大きかったのがホメロスオデュッセイア』、ダンテ『神曲』、ミルトン『失楽園』、ゲーテファウスト』。
 今回、ようやくそのうちの三つまで読んだぞ、という感じです。まぁ時間かかりましたが。


 正直な第一印象を述べますと……「これ、すっごい二次創作っぽさがあるな」でした(笑)。旧約聖書のスピンアウト二次創作。原典をリスペクトし、原典の記述を逐一参照しつつ、原典に書かれてなかった部分を(後付け設定まで含めて)想像力で埋めていくという営みが、とても熱烈な原作ファンによる二次創作っぽさを醸し出していて、ちょっと共感すら抱いてしまった感じがします。いやほんと。
 天地創造の際に天使ラファエルがどの辺にいたか、とか。なんかこう、親近感を覚える想像力の使い方なんですよな……。


 ダンテ読んだ後だからか、「あ、プロテスタントの価値観かなり強目なんだな」といったような事が感じられたのは、それなりに順番を意識して読んできた成果かなぁと思ったり。
 あと、太陽、地球、月と惑星に関する説明で、ちょっとコペルニクス地動説を意識して書き方が曖昧になってたり、天動説地動説両論併記みたいになってるのも面白かったり(笑)。その辺も作者ミルトンへの好感度が少し上がる所です。


物語の始まりが地獄に落とされた悪魔たち、ことにサタンが不屈の闘志を見せて再起をはかる段だったりして、正直途中まで悪魔側を応援しながら読んでました(笑)。なんかこう、『仮面ライダー』のショッカーとかを見る時のような、微妙な憎めなさがあって。回想シーンで、天使軍と激突して情勢不利になった時にまさかの新兵器の開発・投入を意欲的に行うあたりも昭和特撮における悪の秘密結社っぽい……(笑)。彼らの顛末、もうちょっとじっくり見たかったかも。


 まぁ正直なところ、私にとってキリスト教の価値観、考え方というのは未だにどこか遠い、カッコに入ったままの状態で、距離がある分だけやはり没入しきれない部分はありました。まぁ、そこを実感することも含めての読書の醍醐味なので、とりあえず本書については一旦これで良しとしましょう。
 さて、どんどん先に行かねばなりません。次。