国富論1~4

 

国富論 1 (岩波文庫 白105-1)

国富論 1 (岩波文庫 白105-1)

 

 

 どうにか年内に読み切った。まぁ例によって、このレベルの大著となると、しっかり理解しながら読めたかどうかは心もとないけれども。

 

 まぁ私自身、経済学とかにそこまで興味があるわけではないんですが。しかし、貨幣というものは一体何なのか、というところに若干の人文的な興味は持っていて。その絡みでうっかりこの辺まで手を出したという感じです。

 

 正直、アダム・スミスの取っているスタンスに対してどこまで信頼したものか、けっこう読んでいて反感を持った部分もあるので(笑)、難しいなぁというところ。たとえば、彼が労働や仕事を語る際に、怠惰と勤勉の二元論でざっくり切り分けているところとかは端的に賛同できないなと思ったりしました。

 しかし一方で、個々の洞察では思わず唸ってしまうところもあって。お金を「商業を便利にするための道具」とドライに捉えて見せるあたりとかは、けっこう刺激的でした。

 他にも、普段あまり考えないような角度からいろいろ考える契機をもらえたので、まぁ読むのに時間かかりましたが相応の有意義さはあったかなと。

 

 とはいえ、さすがにしろそろ寄り道が過ぎるかなとも思うので、次はもう少し自分の本来の興味関心に近い辺りに戻ろうかと思っていたりもします。

 とりあえず今回はそんな感じ。

先史学者プラトン

 

先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学

先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学

 

 

 これも息抜き読書。

 

 プラトンティマイオス』『クリティアス』で言及されるアトランティス大陸といえば、超古代史オカルトの老舗、トンデモ古代史の筆頭みたいなビッグネームなわけですが。

 本書はそこに言及しているという意味で、トンデモな本かな? という予見をどうしても持ってしまう本であり。また読み終わってみて思い返しても、果たしてトンデモでなかったのかどうかと言われると微妙に判断に困る気もする(笑)。困った本です。

 でも、その境界に切り込んだ事に実は挑発的な意図がある本なのだろうなと。

 

 学問の蓄積というのは日進月歩なもので、5年もすればその期間積み上がった学問成果でかなり見える景色が違ってしまう。考古学の領域もそうです。

 しかし一方で、個人ではカバーするだけでも青息吐息な、次々出てくる最新の学問成果ばかりが大量に積み上がるわけですけど、じゃあその学問成果を集めてみるとどういう景色が見えるの? という部分は、どうしても後手に回らざるを得ない。というか、誰かそこを本当に総体的に見れている人がいるのか? と。実は本書が揺さぶりをかけているのはそこなんですね。

 ナショナルジオグラフィックの最新発掘成果の記事なんか読むと、発掘を担当した学者さんが、その発見の意義を語ったりするわけですが、けっこう「もしかしたらこういう大きな展望が開けるかも知れない」みたいな若干大仰な、時に勇み足気味な事も言ったりしているんですよね。で、本書はそういう当事者の少し勇み足気味な言葉を言質として拾って来て、相互につなぎ合わせていく。と、かつて超古代史オカルトとして一笑に付されたはずのアトランティス文明と、意外に整合する絵が描けてしまう。

 さてどうする? というのが勘所なのだと思うわけです。

 

 実のところ、紀元前1万年から6000年、場所もアフリカからギリシャから小アジアまでという広大な時空を1冊の本でカバーする本書が大味でないハズが無く、個々の議論には飛躍が多い、論証力は弱いというのは確かだろうと思います。

 しかし、逆を言えば「アトランティス文明を考古学的に検証する」というテーマで、「論証力がちょっと弱い」くらいのレベルで論じられているんだから、そこが面白くもあるわけですよな。

 だから、本書は、読んで内容を吟味して、さて次にどうするか、というところこそ重要な本なのではないかと。そんなことを思った次第です。

 

 なお、何度となく宣言しているように私は学者をやる気は1ミリも無く、目指しているのは『宗像教授伝奇考』を見習った伝奇物語の作者でありますので。そういう人間にとっては、純粋に内容自体が極めて楽しい本であるという事も付け加えておきたいと思います(笑)。

ハムレットと海賊

 

 

 とある事情で息抜き読書。たまにはね、こういうのも。

 

 本書自体がすごくエポックな本というわけではないんだろうけど、でもたまにこうして色んな事象を横断的につなげてくれる本って、視野が広がって良いんですよな。

 本書も、無敵艦隊撃破した頃のイギリスを巡る歴史の話と、ハムレットの文学的な読解と、その周辺をいろいろ繋げてくれて、いろいろ楽しく読めました。

 こういう題の本ながら日本人が著者、というのの利点と言うのは、同時代の日本とも話を繋げて、よりテーマに接近しやすくしてくれる事で。同時代の日本は徳川家康の時代なわけですが、三浦按針を本書で触れたような視点からじっくり見た事なかったので、なるほどと頭の中で補助線を一本引けた感じがしました。それだけで十分収穫なのだ。

 

 ま、こういう本をチラッと読めるのも、数年前に頑張ってシェイクスピアをがっつり読んだからなわけで、ああいう有名古典はやはり足場として優秀ですな。まぁ、『リチャード3世』などの史劇はちゃんとしっかり読めてなかったので、そこは弱かったところですが。劇構成でスターウォーズとの近似の話が出たりとか、いろいろ面白かったり。

 

 こういう本で頭の片隅に関心のアンカーを打っておいて、後は必要になった時に掘り下げれば良いのでね。そういう意味で、まずまず有意義だったと思います。

 そんな感じ。