狼と香辛料


狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)


 ここ最近、非常に評判が良いシリーズ。
 ライトノベルでありながら、商業、経済を大胆に取り込んだ作品という事で話題になりました。


 経済っても、ファンタジーですのでGNPがどうとか公定歩合がどうとかいう話ではなく。「悪貨は良貨を駆逐する」みたいな、近世ぐらいの経済を主に扱ってる感じ。
 ……いや、私経済詳しくないから適当書いてますけどね(笑)。
 読んでみるとこれが、結構しっくりはまっていてビックリします。それなりに込み入った話なんですが、ちょっと設定偏重型のラノベと同じくらいの感触で、すらすら読めてしまうのが上手いなっていう感じ。
 ラノベの設定とか、ものによっては結構理屈っぽかったりするわけで、そういうのに慣れている読者なら、これくらいの商業・経済への言及なら苦にならないだろうと思えます。これは上手い調理法かも。


 そして、作品の空気も良いですよね。
 技術向上によって存在価値の薄れ、嫌気がさして村から出てきた豊穣の神さまと一緒に旅をする話なんて、いかにも私の好みですし(笑)。その麦の豊穣を司っていた賢狼ホロの描写も、大変魅力的です。
 数百年を生きてきた者の老獪さと、娘らしい可愛らしさとが絶妙なバランスで同居していて。


 で、ラストの盛り上げ方ですが、ちょっと過去に読んだ別作品と状況がほぼ同じだったせいで、微妙に乗れなかったのが私的に残念だったかな、と。
 まあでも、普通にレベル高い作品かと。
 空気感も良いし、あまりない構想の話だから新味もあるだろうし。読んでみて損はないと思います。