とある魔術の禁書目録7



 これでようやく、刊行されてる巻数のハーフターンか、先は長いなぁと思いつつ、禁書目録の7巻。今回はキリスト教ネタ。
 まあ細かい事はネタバレになるので書きませんが……『ヘルシング』といいこれといい、日本人のキリスト教理解ってやっぱこんな感じなのか(笑)。


 バトル関連は、やっぱりこの人非常に上手いなぁと言わざるを得ない。


 実際に調べてみた人なら分かると思うのですが、現実の魔術というのはエンタメの場でやられているように、術者同士が面と向かって丁々発止、互いに術を打ち合ってアクションするというような、そんなものではありません。
 どの地域の呪術でも大体同じでしょうが、祭壇作って三日三晩祈るとか、相手の髪の毛とかを呪物に込めてこっそり呪うとか、せいぜいそんなものです。
 そもそも相手を害する目的の魔術というのも、数ある術の目的――病気を治すとか未来の不幸を予知するとか――の中のごく一部に過ぎません。


 従って。こうした呪術魔術をネタにして異能バトルものを書くためには、本来のこれら魔術を、「面と向かって互いに術をぶつけあう」ような形にアレンジというか、改変する必要がどうしてもあります。
 現在、エンタメの前線でこうした異能バトルもので作品をヒットさせてる人たちは、まず何よりこの「アレンジ・改変」にセンスのある人、ここが上手い人だと言えるわけで。


 このシリーズの作者である鎌池氏も、この点は相当上手い。
 天草の隠れキリシタンの特徴とかを、異能バトルの場でそういう人たちが「いかにもやりそう」な形に上手く還元してたりとか、読んでて凄く感心しました。
 この手の呪術系を使った作品が多く、色々やりつくされている中、目新しいものを引っ張ってきて上手く料理するという部分では、この禁書目録シリーズは凄くレベル高いですね。安心して楽しく読めます。


 しかし一方で、相変わらず出てくるキャラは善人ばかりというのが、ドラマの面で微妙。
 確かに、単なる悪人を出して、「こいつを倒せばハッピーエンドね」って形でやるのも今日日あまりよろしくはありませんが。
 悪役は悪役で、行くところまでとことん突き抜けてしまって、かえってそのキャラにファンがつく、くらいの事をやってる作者達もいるんだし、その辺はもう少し頑張って欲しいかなぁ。


 まぁ、引き続きこのシリーズは読むでしょう。作者の引き出しの多さには引き続き期待。