連射王 上・下


連射王〈上〉

連射王〈上〉

連射王〈下〉

連射王〈下〉


 主人公が延々シューティングゲームをやる、という前代未聞の小説(笑)。作者は電撃文庫で人気シリーズを持っている方ですね。


 ゲームをやる事がメインの小説というのは一見、成立しなさそうですが。読んでみると、意外にしっかり組まれた青春小説に仕上がってたりします。
 で、結構共感しながら読みました。だってさ、高校時代って言ったって、誰もがスポーツに青春燃やしてたわけじゃないでしょ。ゲーセン通いで高校時代の大半を過ごしてきた人だってたくさんいる訳です。
 なら、そういう人たちのための青春小説があったって良い。スポ根だけが青春だなんて狭い発想は願い下げなのです。
 これは愚痴になりますが、高校時代に文系部に所属していた身としては、野球部をはじめとする運動部への予算偏重・学校側の贔屓ぶりはかなり鼻についた記憶があります。スポーツに打ち込んでいた同級生や、「スポーツは素晴らしい」と感じ続けている友人たちもいるわけですが、一方にそういった「運動部贔屓」に鼻白んでいた文系人間も少なからずいたわけで。
 あと、中学高校とゴルフ同好会をかけもちし、大学の最初の半年ぐらいもゴルフ部に居た身としては、学生スポーツが爽やかでスポーツマンシップにのっとってばっかりでない嫌な場面も相当見てきているわけで。つーか、高校ゴルフ地方大会の試合の最中、時間が空いたからって選手たちコースの隅でタバコとか吸ってたわけで。タンとか吐きまくりだし。
 ……えっと、愚痴終了(笑)。
 ともあれ、学生時代の青春っていうとスポーツばっかりな世間のイメージは非常に面白くないと感じる日ごろの私としては、こういう捻くれた青春小説は非常に楽しかったわけですね(笑)。


 ストーリーですが、読んでみると無駄に熱いです。正に「友情・努力・勝利」という感じで話が進んでいきます(正確には、友情の部分は少し違うかもですが)。ゲームをプレイしているだけなのに、なんか熱血度が高いのが素敵。最後のシーンなんか手に汗握ってしまいます。
 この辺、やっぱり格闘ゲームではなく「シューティングゲーム」を扱ったが故の構成なんでしょうけどね。シューティングゲームは他のジャンルのゲームに比べて、かなりシンプルな「困難な課題とその克服」という構図を持つ分野です。これが格闘ゲームなら、一人プレイでの全ステージクリアはそこまで敷居の高い目標ではありません――何故なら格闘ゲームの本分は対人戦に、つまりコミュニケーションツールとしてあるからです。
 そして、こうした対人戦を扱った話なら、コミック作品などで昔からあるわけです。人対人の構図で、わかりやすいライバルがいる話ですね。
 しかしシューティングゲームの場合、どちらかというと求道に近い挑戦になります。自分との戦いを求められるわけです。
 そこが、主人公の「自分は本気になれる人間なんだろうか」という問いと呼応していくわけですね。この構成はなかなか上手い。


 というか。作中にシューティングゲームのテクニックなどについても図入りで詳細に解説とかがされていたりして。作中で扱っているのは、ケイブ系の弾幕シューティングじゃないんですが、やっぱり通じるものはあり。
 エスプレイドでシューティングの面白さが分かってしまい、今は東方にどっぷり浸かっている小生、なんか無駄にシューティング熱を煽られて大変でした。この本読んでいる間、ゲーセンでシューティングゲームに投じた金額が密かにヤバイ事になってたり(ぇ
 まあお陰で、『虫姫さまふたり』のラスボス拝んだり出来たけどさ。


 そんな感じです。一風変わった青春小説が読まれたい方にはオススメしますよ。