世界征服は可能か?


「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)


 著者は岡田某さん。この人の本を読むのは初めて。


 内容は、一昔前の子供向け作品で当然のように出てくる単語「世界征服」について、それを実際に敢行するとどうなるか、どうすれば良いか、などについて軽く語ったという本。
 まぁ堅苦しく身構えるような内容でもないので、軽く読み終えました。わりと楽しく。


 漫画やアニメなどから適度に事例を引きつつ、意外に楽じゃない「悪の秘密結社」の内情をシミュレートしてみたりして楽しませてくれます。
 世界征服を企む人の四つのタイプとして、


Aタイプ:魔王 「正しい価値観ですべてを支配したい」
Bタイプ:独裁者 「責任感が強く、働き者」
Cタイプ:王様 「自分が大好きで、贅沢が好き」
Dタイプ:黒幕 「人目に触れず、悪の魅力に溺れたい」
 

 の4タイプに分類して見せたり。ちなみに私は黒幕タイプですが(ぇ


 この手の、子供向け作品に科学的な思索を加えて遊ぶという企画は、古くは『ウルトラマン研究序説』あたりから長く続けられてきた定番なわけです。この本も基本的にその路線を踏襲しつつ、しかし話が深まっていくうちに、かつて「支配階級」が存在し得た時代とは違う、「現代」を照らす視座へと話をつないでいく語り口はなかなか上手いです。
 今や、支配階級・貴族階級にしか楽しめない贅沢なんてのはない、と著者は言うわけです。どんな贅沢品もお金を積めば買えると。支配階級にしか楽しめない贅沢、というのはなくなってしまった。
 したがって、某北朝鮮のように領民を虐げて支配者だけが贅沢するという形より、とにかく国民を栄えさせて、その自由主義経済と競争の中で生まれてくる質の高いものを手に入れた方が結果的に支配者も楽しめると。
 これは言われてみればなるほど、という感じでした。北朝鮮を見た時に感じる、なんか時代錯誤だなぁという違和感を上手く言い当ててくれたという。


 突き詰めれば現代において、世界征服するうま味ってあんまりない、という事に話はなるわけなんですが、それでもなお世界征服の道はあると著者は言います。
 それは何か……というのは、実際に読んでいただくと良いかと。手軽で楽しい本ですので、わりとおすすめですよっと。