光車よ回れ!
ものすごく昔、ネットの知り合いだった人が絶賛していた本で、たまたま復刊ドットコムで復刊されてたやつが紀伊国屋書店に並んでたのを見つけ、衝動買いしたまま放置してあったのを引っ張り出して先日読了。
今買おうと思っても売ってるかどうか……たぶんもうないかも。
まあでも一応書いておくと、ネタバレ注意。
- 作者: 天沢退二郎
- 出版社/メーカー: ブッキング
- 発売日: 2004/08/01
- メディア: 単行本
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児童文学なので、漢字には総ルビです。内容は冒険活劇で、小学生たちが協力して、水の中にある逆さまの世界からの侵略(?)を防ぐというような筋。
ファンタジー的な奇想の部分でいくつか面白い情景描写などがありつつも、まあ基本的に子供向けということでそんなにハードではなく……とか思って読んでたら、中盤から終盤の間くらいで主人公の仲間だった双子の女の子が相次いで死亡するという急展開にびっくりさせられたり。容赦ねぇなぁ。
で、なんだかんだでラストまで、引き込まれるように読んでしまいました。
印象に残ったのは、主人公たちのチームのリーダー格だった戸ノ本龍子さんかなぁ。
終始気を張ってて、厳しい顔でみんなを引っ張ってるわけです。リーダーシップのある長い黒髪の子。そんな彼女ですが、1シーンだけ、新しく仲間が増えて気の緩んだシーンがあるんですね。で、何気ない冗談に楽しそうに笑ったあと、ふと口をついて出る台詞がこんな。
「ちぇっ、調子いいなあ。」
「あら。」
「ははははは。」
龍子もはじめてちょっとわらい顔を見せて、「じゃ、カタメのサカズキとするか。」と、男みたいな声色で言って立ちあがると、例のドミノという奇妙なお茶を三人ぶん茶わんについだ。
このシーンがなんか可愛かったわけです(笑)。お前普段、任侠映画とか見てるだろ、というw
最近のライトノベルのキャラ作りって、極端に走ったり道具立てに凝ったりという形でキャラを立てますが、意外にこういう芸の細かさで印象付けるっていう手法は少ないですよね。普段堅苦しい感じの子が、ふいにこういう顔を覗かせることも現実には結構あったりするものですが、フィクションでやると違和感が勝っちゃってなかなか上手い効果にならなかったりしますけど。
これはその点、上手かったなぁと読みながら思いました。
最後、龍子さんが物語りから退場して終わるんですけど、久しぶりに「ああ、もうこの人に会えないんだ」っていう寂しさみたいな気持ちをフィクションのキャラに対して抱いたかな、と。
ここ一年くらい、ライトノベルを重点的に色々読んでいたんですが、その中にこういう気持ちを抱かせてくれる話というの、あんまりなかった気がした。
つまり、これは良い話だった、ってことです。児童向けの話も結構侮れないよね。